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Destination Beside Precious

第13章 10-2.Don't Leave One Alone Ⅱ※



「これとこれを組み合わせると可愛いと思うんだけどなー」
そう呟きながら汐は石を眺める。


旅行に来た記念に天然石のアクセサリーを作ろうと凛が提案したら二つ返事の快諾が返ってきた。
色とりどりの天然石を前にして汐は楽しげに石を見つめる。

「それはオニキス、黒瑪瑙です」
汐とは少し離れたところにいた凛が漆黒の石を手に取ると、人の良さそうな店員が声を掛けてきた。

「オニキス?」
「はいスポーツ選手などがお守りとしてよくつけてる石ですね」
オニキス、自分自身の軸を安定させる石。着実に目標を実現する為に地に足をつけた行動をする様に導く。
そんな石だと店員は説明した。

「これ、使うか」
そう呟いてまた石に目を落とすと、ひとつ目に留まるものがあった。
石榴のような赤紫。薔薇色の、汐の瞳と同じ色の石。

「そちらはローライドという種類のガーネットです」
肉体と精神両方のエネルギーを活性化させてマイナス感情を明るくする石だそうだ。


(そんな効果がある石と同じ色だったんだな、汐の目…)

これまで汐と過ごした時や気持ちを思い出して、その石を手に取った。

「お兄さんはなにかスポーツをなさっているのですか?」
「水泳やってます」
「やっぱり!逆三角形の体型が素敵ですね!」
「はあ…」
選んだ石ではなくて体型のことを言われるとは思わなかった。
店員の頬がうっすら染まっている理由がわからない凛は曖昧な返事をする。

「スポーツをなさっているのでしたら…」
凛を見つめながら頬を染めた店員ははつらつとした笑顔と声でさらに接客をする。



(凛くんは自分の目標の為のアクセサリー作るんだ)

接客されている凛を見て汐は思った。
凛が目標の為のアクセサリーを作っているのなら自分もそうしようと手を伸ばす。

「…」
石を前に汐の手が止まる。
なにから手をつけていいかわからない。
忘れていた、というより考えないようにしていたことが脳裏を過ぎる。
汐は眉を寄せる。
凛がこちらを気にかけていないことは幸いだった。

「なにか気になる石はございますか?」
戸惑いと迷いを浮かべた汐の元へ別の店員がやってきた。
控えめな笑顔はとても親切そうに汐の瞳に映った。
意を決して口を開く。

「あの、実はわたし…」
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