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Destination Beside Precious

第12章 10.Don't Leave One Alone Ⅰ


時刻は10:30を少し過ぎたころ。

何本泳いだだろうか。部員たちが苦しそうな顔をしている。

「大丈夫かな…」
「やっぱめちゃくちゃね…」
隣で璃保が頭を抱える。
当の御子柴は相変わらずの威勢の良さで、俺に勝てる奴はいないのか!と叫んでいる。


マネージャーとしての本能から今すぐにでも介抱に走りたいと思い始めた矢先、新たな訪問者が現れた。

「ハルくん…真琴くん?え、岩鳶水泳部?」
観覧席である2階ではなくカオスと化してるプールサイドに岩鳶水泳部が現れた。
その様子を見つめていると、なにやら凛が彼らに声を掛けていた。
そこに御子柴も加わり、こちらからでは何を話しているのかわからないが賑やかなことが窺える。

「あ、あの眼鏡の人、連れてかれた」
下で話がまとまったのか、眼鏡の人―怜が似鳥に半ば強制的に連れていかれた。
他のメンバーはみな水着を用意している。泳ぐつもりだろうか。

「何が始まるんだろう」
岩鳶と鮫柄、なにやら面白いことが始まろうとしていた。



「にしても観客がいっぱいいて驚いたよ」
「鮫柄が一般公開するなんて珍しいからな」
「女の子もいるよー!」
いち早く水着に着替え終わった3人は怜を待ちながら凛と話していた。

「そういや、今日は汐も来てるぜ」
「汐もいるのか?」
「ええ!?汐ちゃんって凛ちゃ…むぐっ!」
凛に口を抑えられて最後まで言わせてもらえなかった渚は不満げに凛を見つめた。

「渚。凛と汐ちゃんが付き合ってるのは内緒」
「そうだった、ごめんごめん。汐ちゃんってバレンタインの時に凛ちゃんが話してた子だよね?」
てへ、とあざとく舌を出した渚は声を抑えて話し始める。
江からチョコを預かっているといって呼び出された帰り、渚と怜に汐のことを打ち明けた。

「ああ。今日は無理だが今度ちゃんと紹介する」
「汐ちゃんってあの子だよね?すっごく可愛い!楽しみにしてるね!」
「おう」
真琴にこっそりと汐がどの子か教えてもらった渚は屈託の無い笑顔を凛に向けた。
渚の笑顔になんだか照れくさいような、くすぐったい感じがして凛はぶっきらぼうに返事をした。

「汐ちゃんが見てる手前、かっこわるい姿は見せられないね。凛?」
「言うじゃねぇか」
笑顔で真琴が挑発した。凛は不敵に笑って応じる。
ブーメラン水着に着替えた怜が戻ってきた。

岩鳶vs鮫柄のフリーリレーの開幕だ。
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