Destination Beside Precious
第11章 9.Love And Wrap That
「凛くん顔赤い。えっちなこと考えたでしょ?」
「なっ…!ちげぇよ!!」
半分ほど当たりだ。しかし真面目な話をしている最中に邪なことを考えているとは思われたくないから必死に否定する。
「いいのいいの。あんまり話が重くなりすぎるのは好きじゃないから気にしてないよ。でも茶化してごめんね」
「お、おう…」
誤魔化すように凛はアイスコーヒーが注がれたグラスに口をつける。
「ピルには生理痛を和らげてくれる効果があるの」
「そうなのか?」
「うん。毎月お金はかかってきちゃうけど、もうあんなに苦しい思いをしなくてもいいし誰にも迷惑をかけないって考えると安いものだよね」
「そう、だな…」
「それに…」
「?」
「〝ピル飲めばゴムなしでセックスできるわよ〟」
「!?」
アイスコーヒーを吹き出しそうになり、凛は盛大にむせた。
「って、璃保が言ってたよ」
「なんだ、璃保かよ…」
咳き込みながら凛は眉を寄せる。
口調を考えればすぐにわかることだし、あんなにストレートな言い方をするのは璃保しかいない。
それでも汐の口から出た言葉は衝撃的すぎて一瞬思考が止まりそうだった。
「…そのことについて凛くんはどう思うの?」
「俺は…、その、お前がピルを飲んでもゴムはつけてしようと思ってる」
「汐を信頼してないわけじゃねぇけど、飲み方次第でもしかしたら妊娠するかもしれねぇだろ…。望まない妊娠でつらい思いをするのは女の…汐のほうだ。俺はまだ責任が取れる歳でもねぇし収入だってねぇ。だから俺はゴムは必要だと思う」
確かに隔てるものがなにもないセックスは最高の快感を味わえるかもしれない。
しかし目先の快感を求めて汐を傷つけるようなことは絶対にしたくない。
本当に愛し合ってるのなら、その時が来るまで0.02mm離れてるべきだ。
「凛くんそこまであたしのこと考えてくれてるんだ…嬉しい」
「たりめーだろ。まだ17になったばっかのガキが何言ってんだって思われるかもしれねぇけど、俺なりに…その、お前との将来を考えてるんだ」
そこまで言うと、汐がぴったりくっついてきた。
「どうした?」
「どうもしない。ただ、本当に嬉しくて」
あたしって本当に幸せ者、と汐は凛に抱きついた。
(幸せにしてやりてぇなあ…)
そう思いながら凛は汐にキスをした。溢れる好きはやまず、身を任せる。
この後の時間は、甘い蜜だった。