Destination Beside Precious
第11章 9.Love And Wrap That
「もしもし凛?」
『ああ』
自宅に遊びに来た遙を自室にひとり残して真琴は外に出た。
その際に一旦通話を切ってかけ直した。
「母さんに少し話を聞いてきたんたけどね」
『悪いな…』
「ううん。俺も汐ちゃんが心配だから気にしないで」
母親にはこう話した。
女の人は生理痛がひどい時にはどうしてもらうのが嬉しい?友達の彼女さんが生理痛で苦しんでるらしいから教えて欲しい、と。
身近な女性ではなく自分を頼ってきた凛のことを考慮して母には名を伏せた。
母親は快く教えてくれた。
「まずはゆっくり身体を休ませてあげるのが先決なんだって」
『おう…』
「身体を温めてあげるのも効果的みたい。温かい飲み物を用意してあげるとか…。あとは、腰とかをさすってあげるとか…」
『そうか…』
普段の凛からは想像できないくらい大人しく従順に話を聴いている。
(凛、本当に汐ちゃんのことが心配なんだな…)
「でも1番は直接本人にどうしてほしいか訊いてみるのがいいらしいよ」
『そうなのか?女はそういうこと訊かれるの嫌じゃねぇのか?』
「うーん…それはその人の性格によるかと思うんだけど…俺は第3者だからわからないけど、汐ちゃんはそういうの訊かれて怒るタイプじゃないと思うよ」
確かに汐は怒らない気がする、と凛は電話越しに声をもらした。
『サンキュ、真琴。助かった』
「うん。けど、凄い怖い声で電話してきたからびっくりしたよ」
『悪ぃな。…あ!このことは絶対誰にも言うなよ!特にハルには!』
「わかってるよ。俺がここで誰かに話したら凛が俺に電話した意味ないだろ」
『そういうことだ』
軽く笑った後、真琴は姿勢を正すように声を正した。
「凛、本当に汐ちゃんが大切なんだね。男の俺にこんなこと訊くなんて相当勇気いるだろ。すごいなって思うよ」
『…まあな。けど、恋人があんな真っ青な顔してるんじゃそんなことも言ってられねぇよ』
「恋人、ね…」
『なんだよ』
「なんでもないよ。はやく汐ちゃんの元へ行ってあげて。それじゃ」
『ああ。じゃあな』
通話を切って真琴は遙の元へ戻った。
真琴を迎え入れた遙はそのポーカーフェイスに心配の色を宿して訊ねた。
「凛、なにかあったのか?」
「ううん。もう大丈夫」
「そうか」
「ねぇ、ハル」
「なんだ?」
「なんでもないよ」
恋人っていいな、と遙の隣に腰を下ろした真琴は微笑んだ。