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Destination Beside Precious

第11章 9.Love And Wrap That


「汐、しばらく寝てろ。俺はなんか温かいモン持ってくる」
「うん…」
あの状態で家まで帰るのは不可能だと判断した凛は、ひとまず鮫柄の寮まで汐を連れてきた。
とても歩ける状態でなかった汐だが、おんぶは嫌がったから横抱きにして寮まで来た。
その時の寮管のおじさんは凄い顔をしていたが、それに構うことなく部屋に連れてきて今に至る。

部屋から出ると、扉を背に凛はしゃがみこむ。


(こんなとき俺はどうすりゃいいんだ…!?)

保健の授業で第2次性徴における男女のことは勉強した。
しかし学んだのは身体に起きる変化のみで、掘り下げて話をしたわけではない。
まして、女性特有の事象の対処法など教えてくれるわけなかった。


(どうする…?)

どうするもなにも、どうしたらいいかわからない。
しかし汐が苦しんでいる。あんなに真っ青な顔でうずくまっている。
苦しむ恋人の為になにかしてやりたい。


(かくなる上は…)

凛は携帯電話を取り出した。
電話帳を開き、とある名前を探す。

目当ての連絡先を見つけ出し、通話ボタンを押した。




「電話…?凛から…」
優しそうな目を軽く見開いて応答ボタンを押した。

『もしもし、真琴』
「凛?そんな怖い声でどうしたの?」
「凛からか?」
すぐそばにいた遙も反応した。

『単刀直入に訊く』
「?どうしたの?」
迫るような声音に自然と真琴の背筋も伸びる。

『生理痛の対処法を教えてくれ』
「…は?」
『だから、せい…』
「知らないよそんなの!」
全く見当違いの質問をされて真琴は赤面する。
急にそんなこと言われても困る。

『知らねぇのかよ!何の為の共学だよ!?』
「意味わかんないし理不尽すぎだろそれ!て言うかなんで俺!?そういうのは江ちゃんに訊けば」
『馬鹿お前!こんなこと妹に訊けるわけねぇだろ!』
確かにそうか、と真琴は納得する。

『頼む真琴。お前しか頼りにできねぇんだ。汐がすげぇ苦しんでる。汐の為になにかしてやりてぇんだ…』
「汐ちゃんが?」
汐の名前が出てきたことで真琴の表情が変わった。
それにこんなことを冷やかしで訊いてくる凛ではない。
凛は本気だ。それなら力になってあげなくては、真琴はそう思った。

「わかった。ちょっと待っててね」

「ハルごめん、凛が大事な話があるみたいだから少し席外すね」
「凛が?…ああ、わかった」
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