Destination Beside Precious
第11章 9.Love And Wrap That
もらったプレゼントはその場で開けるのがマナーだ。
凛は包装を丁寧に剥がして中を確認する。
「これ…」
「凛くん音楽聴くの好きって言ってたよね?ランニング中はちょっと厳しいけど、寮にいる時に使って欲しいな」
汐からのバースデープレゼントは、凛がずっと欲しいと思っていたヘッドフォンだった。
重低音が響くパワフルバスであり、中高音域がよく伸びてボーカルがクリアに聴こえる高音質仕様の高級品。
欲しいと思ってもなかなか手が届く品ではない。
以前汐とショッピングに出掛けた時にぽろりとこぼした〝欲しい〟という発言を覚えていたのだろう。
「すげぇ嬉しい。さんきゅ、汐。大切にする」
「喜んでくれてよかった!」
凛の笑顔に汐も笑顔になる。
そして少し姿勢を正し、汐は続ける。
「今日は1年に1回の大切な日…凛くんが生まれた日。こうして出会うことが出来て、凛くんの一番の女の子でいることが出来て、あたしとっても幸せ。…凛くん、生まれてきてくれてありがとう」
それは、俺もだ。そう返そうと思ったのに言葉が出てこない。
目頭が熱い。
「汐、ありがとう」
瞬きした瞬間に涙がこぼれた。
そう言うのがやっとだった。この〝ありがとう〟に凛の思いすべてが込められている。
そのことを理解している汐は柔らかな笑顔を浮かべて、どういたしまして、と返した。
駅の改札は帰宅を急ぐ人が忙しなく行き交う。
手を繋ぎながら凛は汐を帰したくない思いだった。
しかしお互い明日は学校でそう我侭も言っていられない。
「汐、今日は本当にありがとな」
「ううん、あたしこそ凛くんが喜んでくれて嬉しいよ。ありがとう」
本当に幸せな誕生日だった。
こんなに幸せな誕生日は初めてだ。
汐の誕生日には、自分が噛み締めた以上の幸せをプレゼントしてあげたい。
「汐」
「ん?」
人目があまり気にならない所へ手を引く。
そしてそのまま汐を抱きしめた。
「大好きだ。すげぇ幸せ。なぁ、来年もこうして俺の誕生日祝ってくれよ」
「あたしも凛くんが大好き。来年も、そのまた次の年も、ずっとお祝いするつもりだよ。」
凛の胸に身を預けて汐は幸せそうに微笑んだ。
「これからも、よろしくね」
「ああ。これからも仲良くやっていこうな」
17歳の最初の日、これからも凛くんが幸せでありますように。
汐はそう心の中で唱えながら、凛とキスをした。