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Destination Beside Precious

第11章 9.Love And Wrap That


「料理、すげえ美味かった」
「よかった」

普段食べることができないホテルの料理に、胃も胸もいっぱいな思いだ。
今日はとてもいい日だ。
昼間はチームメイトに誕生日を祝ってもらえて、夜はこうして大好きな人に非日常をプレゼントしてもらえた。

「失礼いたします」
黒服の声がした。デザートを持ってきたのだろう。
そんなことを凛は思ったが、なかなか黒服は入ってこない。かわりに数人のスタッフが入ってきた。

状況が呑めずにいると、一番最後に黒服が入ってきた。
その手には、なにやら花火のようなものが飾られた皿があった。

「…!?」

「凛様、お誕生日おめでとうございます!」
黒服の声に同調して数人のスタッフは場の雰囲気を乱さない控えめな拍手を凛に贈った。

黒服が持ってきたのは、花火が添えられたバースデーケーキだった。
プレートにはチョコレートソースで〝Happy Birthday Rin〟と書かれている。

こんなサプライズが用意されているとは思っていなかった。
驚きと感動で声が出ない。目頭が熱くなる。

「サプライズ成功、かな?」
いたずらな声に顔を上げると、嬉しそうな汐の笑顔。
全部汐の計らいだろう。
いい意味でしてやられた気分だ。

「…大成功だ。本気で驚いた」
凛の言葉に汐は満足そうに笑った。
以前真琴の誕生日にサプライズを仕掛けたことがあった。
あの時の真琴は今の自分のようにとても驚いていた。
仕掛ける側は経験しても、仕掛けられる側は経験したことがなかった。
あの時の真琴も、きっと今の自分と同じ気持ちだったのだろう。

「写真をお撮りしましょうか?」
そう言って黒服はカメラを取り出した。

「お願いします!」

正直にいって写真は苦手だった。どんな顔をしていいか分からないから。
しかし、今日は違った。
自然と笑顔が溢れる。

汐、ありがとう。

シャッターを切った黒服が品の良い微笑みを浮かべた。

「本日はお誕生日おめでとうごさいます。今撮ったお写真はクロークにてお渡しいたしますので、お帰りの際にお声かけくださいませ」
そう言って黒服たちは席を後にした。

「いや、まじで、その、なんて言っていいかわかんねぇけど…」
胸がいっぱいでうまく言葉が出てこない。

「凛くん、これ、お誕生日プレゼント」
言葉に詰まる凛に汐は荷物バスケットに入れてあった紙袋を手渡した。
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