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Destination Beside Precious

第11章 9.Love And Wrap That


汐の手元で揺れるグラスに、未来の汐の姿を見た。

きっと、今の笑顔を忘れずに更に綺麗な女性になっていると思う。
その時は、自分もこの場に相応しい男性になって汐のことをエスコートできる存在であって欲しい。

「今は無理かもしれねぇけど、将来は俺がエスコートするからな」
「楽しみにしてるよ。その時まで…ううん、その先もずっとあたしのそばにいてね」
「約束する」
嬉しそうに笑う汐が愛しい。
約束したからには、一人前の男にならなければ。その為には夢を叶えなければ。
汐の笑顔は自分を奮い立たせる。
恋人の笑顔を守れる人でありたい。
凛はそう思った。


「あ、お料理きたよ」
汐の声に会話を中断して黒服を迎え入れた。
凛に、続いて汐に料理を用意して黒服は一礼して席を後にする。
冬野菜とジャガイモをメインに日本海の海の幸が添えられ、彩り良く盛りつけられた前菜が運ばれてきた。

「いただこっか」
「そうだな」
そう言って凛は並べられた銀器の一番外側のものを手に取った。


その後、次々と料理が運ばれてきた。
かぼちゃのポタージュ、パン、松葉ガニの焼き物。
どれも季節の食材をふんだんに使った贅沢なものだった。
後はメインとデザートのみとなった。

予め想像した通りだったが、汐のテーブルマナーは完璧だった。
お嬢様は伊達ではない、なんて考えてしまう。
普段大きな口を開けて美味しそうに食べる様子とはまた違った姿に凛はなんだか誇らしい気分になる。

「凛くんテーブルマナー完璧だけど習ったことあるの?」
ナプキンで控えめに口元を押さえながら汐は訊ねた。

「オーストラリアにいた頃にホストファミリーから教えられたことはあるな」
オーストラリアには箸を使う文化は無い。
4年間ナイフとフォークで食事をしていた時に覚えておくといいよと言われ教わったことがあった。

「そうだったんだ。ナイフとフォークの使い方が綺麗でちょっと見蕩れちゃってた」
そう汐はいたずらな笑顔を見せた。


「失礼いたします」
会話の流れを無視しない絶妙なタイミングで黒服が料理を運んできた。
用意されたメインに凛は感嘆の声を上げそうになる。
やがて黒服が去ると、凛は目を輝かせた。

「すげぇ…」
「凛くんお肉好きだもんね」
メインは牛フィレ肉のパート包み焼。
嬉しそうな凛につられて汐も幸せそうな笑顔を浮かべて銀器を手に取った。
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