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Destination Beside Precious

第10章 8.Don't Forget Mydear


凛はお猪口に満たされた水を口に含み、汐の唇を奪う。
とろりと流れ込んでくる水と凛の舌を感じて汐は凛の浴衣を握る。
重なった唇の隙間から溢れる滴が、流線を描きながら喉元を伝い浴衣から控えめに覗く豊かな胸の谷間に流れ落ちる。

「悪ぃ、濡れちまった」
「ううん、気にしないで」
水が流れた跡を見つめながら凛は呟いた。
流れ着いた先の魅惑の場所に、込み上げる吸いつきたい衝動を抑えながら凛は手を添えていた頬を撫でた。

「なんか肌すべすべじゃねぇか」
「温泉に美容成分が入ってたみたい」
凛くんもすべすべだよ、と汐は同じように凛の頬に触れながらキスをした。

「触りたくなる肌だな」
浴衣から肌蹴る汐の脚を撫で上げながら凛は囁いた。

「凛くんも…」
最後まで伝える前に凛によって唇を塞がれた。
柔らかく重なるキスはだんだんと深く密度を増していく。

「ん…、ぁ…ん…」
会話が途切れ、部屋に響くのは互いの口を吸う音と艶かしい息遣いだけになった。
熱を帯びた視線を交わし合い、また唇を求める。

「汐、」
囁くように促されて、ゆっくりと布団に身を預ける。
追うように凛が迫ってきてまた唇が重ねられた。

喉へ唇が寄せられる。
浴衣を締めていた帯はいともたやすく解かれる。
和服は洋服と違い1枚ずつ脱がしていく必要が無い。
露わになりそうだった胸元を汐はそっと手で隠した。

「風呂の時から思ってたが、まだ恥ずかしいか?」
「恥ずかしいよ…。凛くんは鍛えてるから見られても恥ずかしくないかもしれないけど、あたしはそうじゃないの…」
「ばぁか、柔けぇのがいいんだよ。筋肉好きなのはいいが、お前は鍛えるなよ。俺はありのままの汐が好きだ」

ありのままが好き、なんていい響きなのだろうと汐は幸せを噛み締める。
「それに、俺だって少しは恥ずかしいんだぞ。恋人に身体を見られるのは。…ま、それよりも喜びのがでかいけどな」

まっすぐ見つめてはにかむ凛を思わず抱きしめた。

「それは、あたしもだよ…」



枕元の間接照明に照らされたふたりの影が襖に伸びる。
凛の幸福と快感に歪む表情や色めく声は自分しか知り得ない。
激しく揺さぶられながらきつく抱き締められると、意識が飛びそうなくらいの幸福感に包まれる。
このまま愛の海に身を投げたい、そう思ってしまうほどに。
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