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Destination Beside Precious

第9章 7.Life and non-Life ※



「汐、おはよ」
「あー璃保。おはよ」
成人の日の翌日。
豪雪地帯といえど冬休みが極端に長いわけでもなく、この日から学校だった。
外では雪が積もっていて、白亜のスピラノと相まり美しい純白を魅せていた。


「早速だけど、はい。これ、プレゼント」
「なにこれ?赤飯のおにぎり…?」
「そうよ」
「えー、ありがとう。食べていい?」
「もちろん」
律儀にかけられた細い赤リボンを解いて個装を破り一口頂く。

「けど、なんで赤飯?」
「なんでって、お祝い」
「なんの?」
赤飯を頬張りながらきょとんとする汐をよそに、璃保は意味深な笑みを口元に浮かべた。

「凛と一線を超えたんでしょ。おめでとう」
「ちょ…!」
璃保の口から飛び出た発言に汐は思わず噎せてしまう。
祝合体、とか言いながら肩を震わせて笑う璃保に汐は耳まで赤くする。

「まあ赤飯はネタよ、ネタ。けど本当によかったわね。前と表情が違う。汐、すごく幸せそうだし更に可愛くなった」
「もう、璃保ったら…。ありがとう」
嬉しそうに俯く汐に璃保は柔らかな笑みを浮かべると、満足そうに頷いた。


「アンタたちの仲の良さは汐の首にあるキスマを見ればわかるわ。なかなか消えないわね。かなり思いっきりつけられたのね」
「これねー」
そう言って汐は髪で隠れた首をさする。
絆創膏だとあからさま過ぎるからガーゼを貼り付けて来たのだが、今度は逆に会う人全員に心配されてしまった。
なにかいい手段はないものかと考えるが、我ながらそれは幸せな悩みだと思う。

「まだ詳しく聴けてないから、また話してね」
「…うん」


「そういえば璃保は彼に会ったの?」
「アイツも帰省してたから大晦日まではアイツと一緒に過ごしたわ」
彼と過ごした時間を思い出し璃保は表情を綻ばせた。
アイツ呼ばわりしているが、璃保は彼のことが本当に好きなのだろう。
でなければ遠距離恋愛は続かないと思う。
もし、もし自分が同じ状況に置かれたら寂しさに耐えられるだろうか。
汐は今が幸せ過ぎて先のことは考えられずにいた。

「璃保も彼に会えて楽しかったみたいでよかった。その話もまた聞かせてね」
「ええ」


「実家にも帰ったんでしょ?」
「あー帰った帰った。てか、ほぼ強制連行」
帰ったというよりかは連れ帰られたという表現の方がはまるらしい。
璃保は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
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