Destination Beside Precious
第9章 7.Life and non-Life ※
荒い呼吸の中で汐はベッドに溶けゆく思いだった。
なにも聞こえない。自分の心臓の音と荒い呼吸音が頭の中に響く。
深い水の中に沈んでいくようだ。
水といっても、汐が恐れるようなものは何も無い。凛の腕の中にいる時のような心地よい幸福感に満たされてゆく。
下半身全体がゆるく震える。
ただ、心臓が大きく脈打って身体の奥深くから熱い蜜が溢れる感覚に身を委ねた。
(なに、これ…)
恥ずかしいところを凛の舌で愛撫されていたのは覚えている。
お腹の奥が蕩けるように気持ちよくて、自分を抑えられなくなってきて。
下半身の震えが収まった。今度は身体がぐったりと弛緩して力が入らなくなってきた。
「汐…」
暗闇の中に差す光に手を伸ばすかのように、凛の声に閉じていた目を開けた。
視界に飛び込むのは、愛しい彼の姿。
「凛くん、あたし…」
切なげな瞳を凛に向ける。
凛の手が汐の頬を撫でた。思わず目を細めて、ぎゅってして、と懇願する。
「イッた瞬間、すげぇ可愛かった」
愛おしそうに汐を抱きしめた。
そうか、あの感覚はイッたというものなのか。と、汐は腑に落ちた。
こんなに早く絶頂を体験するなんて思ってもみなかった。
話で聞くそれよりも遥かに大きい快感だったと、未だに薄ぼんやりとする頭で思った。
キスを求めて汐の手が凛の背中を引き寄せる。
言葉などなくてもそれは伝わり、凛の唇が汐に重ねられる。
溶けるように自然に吸いつく柔らかさに喉の奥から思わず声が洩れる。
凛の手が再び下へ降り背中から腰へ、柔らかな丸みを伝い内腿を撫でられる。
蜜の溢れる花弁に触れられる。そのまま凛の指を難なく受け入れると、汐の肩が小さく跳ねた。
透明だった愛液はより密度を増し濃いものへと変わっていた。
「ん…っ、んぁ…ん…」
耳に届く水音は、キスによるものなのか、花弁の奥への愛撫によるものなのかはわからない。
果てたことで身を潜めた快感がまた目を覚まし始める。
「濡れ過ぎだ」
「ぅん…言わないで…」
内緒話をするかのような声で凛は囁いた。
女の身体とは不思議なもので、ついこの前まで処女だったというのに凛に愛されることによって全身が性感帯なのではないかと勘違いしてしまうほど女の反応を示してしまう。
羞恥心を隠すように凛の肩に頭を預け、汐は消え入りそうな声で言う。