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Destination Beside Precious

第9章 7.Life and non-Life ※


愛しい名前を甘く呼ぶと、汐は上を向いた。
その愛らしい唇に自分の唇を重ねる。

触れるようなキスをした。超至近距離で熱を持った視線を交わし合う。
焦れったいと言わんばかりに今度は汐の方から唇を奪ってきた。
なすがままに受け入れていると、おもむろに上唇を啄まれ、あえてなにもせずにいると上唇を吸っていた唇が離された。
どうやら息が続かないらしい。


凛は汐の唇に触れる。
すると汐はやおら凛の指を口に含んだ。

凛は意表を突かれて汐を見る。
甘噛みされた指を舌で舐め上げられる生々しい感覚が血液が駆け巡るように全身に広がる。

「誘ってんのか?」

汐は顔を上げた。
まっすぐな赤い男の瞳に射抜かれたような気分だ。
自分を抱きしめる腕や身体は心做しか力が籠っているような気がする。
胸が高鳴り出す。
身体の奥深くが頭を擡げたように疼き出す。


「あたしだけを見て…?」

凛は汐の腰に手を回した。空いた右手は後頭部に触れる。
そのまま噛み付くようなキスをした。
獰猛な鮫を思わせるキスだったと思う。

止まらなかったのだ。
指を甘噛みされて、可愛らしく思いを吐露されて。
気持ちが言葉を追い越し、一番最初に動いたのは身体。
少々強引に唇を奪う形になったが、汐はそれを受け容れてくれた。

「…んっ、…ふ…ぅん…」
息継ぎの度に艶やかな声を洩らす汐に凛は次々と熱くて深いキスをする。
絡まる舌は時々いやらしい音を立てる。
餓えた肉食獣のように唇を貪ると、汐も同じだけ求めてくる。

キスによる快感は汐の腰を砕けさせ、そのままベッドに身を預けさせた。
汐を組み伏せてなおキスはやめない。やめさせてくれない。
凛はそのまま汐に覆い被さる。

「俺の目には汐しか映ってねえよ」
じっと見つめる濡れたローライドガーネットの瞳が官能的な気分を高めて止まない。
今この瞬間、堪らなく汐が愛しい。
自分を求めて伸ばされた手を取り、唇に、頬に、それから喉や首筋にキスを落とす。
拒絶されたらやめるつもりだった。自分の欲望を第一にして汐が嫌がることを強要するつもりなど微塵もない。
しかし汐は嫌がる様子を見せない。むしろもっとと求めて無自覚に誘惑してくる。

「優しくしてね…?」
「ああ」
鈴の音のような愛らしい声でお願いされる。
可愛くて堪らない。
ああもう本当に好きだ、そんな思いを胸に宿しながら汐の唇を奪った。
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