Destination Beside Precious
第9章 7.Life and non-Life ※
「夏貴っていったら」
汐は話題を切り替えた。
12月29日。凛が帰って少ししたらSCの遠征に出掛けていた夏貴が帰ってきた。金メダルを携えて。
そのこと汐から聞いた凛は、んなに実力のある選手なら鮫柄に欲しいとこぼした。
しかし、今の論点はそのことでは無いらしい。
「これ!」
そう言って汐は髪の毛を払って首を露出させた。
そこには赤紫に色づく痕が存在を主張していた。
消えかけてはいるが、汐の白い首筋には目立ちすぎる色だった。
それは初めて身体を重ねた夜に凛がつけた愛の噛み跡。キスマークだった。
あ、と凛はきまりが悪そうな表情を浮かべる。
「悪ぃ、夢中だった」
「これ、夏貴に突っ込まれたんだからねー」
汐の話曰く、ヘアアイロンで火傷をしたと嘘をついたらしい。
気をつけてね、と夏貴に言われてその場は終わったが、かなり気まずかったらしい。
「今日はタートルネック着てたから凛くんのお母さんと江ちゃんには気づかれなかったけど…」
「たまたまそれ着て来てたのか?」
「違うよ!凛くんの家族に見られたらそれこそ気まずいでしょ!」
もう、と文句を言うがそんなに怒ってはいないことが見て取れる。
思わず凛はにやりと表情を崩してしまう。
すると、にやにやしないでよと汐に非難されてしまった。
しかしここでも怒っている様子は見られなかった。
「あたしは部活で水着にならないからいいけどね。…凛くんにはつけられないなー」
汐はマネージャーであるから脱がないが、凛はそうではない。
凛にキスマークをつけることは絶対にしてはいけないことだと思う。
「キスマはついてねぇけど、背中に爪の痕はついてたぞ」
「うそ!ごめん凛くん」
破瓜の瞬間、痛くて凛の背中に回した手に力が入ってしまった。
その時に力を入れすぎて、凛の背中に爪を立ててしまったらしい。
凛が汐の身体にキスマークをつけた時に夢中だったのと同じで、汐も凛を受け入れる時に夢中で必死だったということだ。
そんなことにまで考えが及ばない程、互いを求めあっていた証だ。
「いや、構わねぇよ」
凛からしたら、背中につけられた爪痕でさえ愛しい。
愛し愛された結果であるから。そのことを咎めることなどするわけがない。
凛は汐の腕を引いて抱きしめた。
キスマークのことで怒る汐が可愛くてそうしたくなってしまった。
「…凛くん、好き」
「俺も」