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Destination Beside Precious

第9章 7.Life and non-Life ※


電話を切った汐に凛は声をかける。

「夏貴からか?」
「うん。今夜雪すごいから友達の家に一泊してくるんだって」
「そうか。ま、下手に帰ってくるよりそっちのが安全だな。じゃあお前は今夜母親とふたりか」
「あー、お母さん今夜もいないよ。どこいったのかは知らないけど」
「は?じゃあ汐お前今夜家にひとりか?」
「そうだね」
ひとり、という状況をあまり気にしていないらしい言い様に凛は思わず口を噤む。
そして少し考えてこう言った。

「なら今夜俺の家来るか?」

「えっ」
突然の凛の提案に汐は間の抜けた声を出してしまう。

「江もお前とお泊まりしたいって言ってたろ。家にひとりでいるよりそっちの方がいいだろ」
彼女が外出する直前に言っていた。〝今度私ともお泊まりしようね〟。
それがこんなにすぐ実現するとは思わなかった。

「…いいの?あたしがいたら家族団欒の邪魔にならない?」
「ならねぇよ。江はもちろんだが母さんも歓迎するだろうし」
「でも…」
「うだうだしてるなんてお前らしくねぇぞ。来たいのか、来たくないのか、どっちだ?」
「…行きたい!」
わざとらしく作った怖い顔を一瞬にして柔らかいものに変えて凛は汐の頭を撫でた。
自分の家族に汐のことを知ってもらういい機会だと凛は思った。

「決まりだな。じゃあそうやって母さんに連絡するな」
そう言って凛はポケットから携帯を取り出す。
電話帳を開こうとしたらふいに手の中で携帯が震えた。

「ん?母さんから電話だ」
自分から電話する手間が省けた、なんて考えながら凛は通話ボタンを押した。

「もしもし、母さん?」
『もしもし凛?ごめんね、汐ちゃんとデート中に』
「いや、俺も今母さんに電話しようと思ってた」
『そう?なら丁度よかった。あのね、お母さんと江なんだけど、今夜大雪になるみたいだから岩鳶に泊まっていこうと思うの』
「…は?」
『だから、今夜凛ひとりになるけど』
「そのことなんだけど、今夜汐が家にひとりらしいから」
『なら丁度いいじゃない!汐ちゃんに家に泊まってもらえば!』

電話越しに嬉しそうに声を弾ませる母親に凛はなんとも言えない表情を浮かべる。
汐には凛側の会話しか聞こえないから、凛の苦笑の理由がわからない。

『もう高校生だからご飯のことは自分でなんとか出来るわね。じゃあ、汐ちゃんと仲良くするのよ』
「え、ちょ…母さ…」
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