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Destination Beside Precious

第9章 7.Life and non-Life ※


瞼を伏せる。
「お賽銭500円入れちゃった。欲張りだからお願いごとを1つに絞れなかったの」

そこに浮かぶのは、凛の顔。璃保の顔。それと…

「凛くんとずっと一緒にいれますように。スピラノの子たちが全国制覇できますように。…」

あの悪夢からもうすぐ4年。たとえ4年の歳月が流れようと鮮明に刻まれた記憶。


(…海子…)

汐は目を開く。そして凛に何も無かったようにいつも通り笑いかけた。

「それと、二兎を追う者は一兎をも得ずって言葉があるよね。だけど、あたしは二兎を得ることができる人になりたいな」

「…そうか。できるさ」
「できるかな…?」
「なりたい自分になるのは自分だ。俺も頑張るから一緒に頑張ろうぜ」
「そうだね」

いかにも凛らしい応え。
今年は高校3年生になる。決断を迫られることが多くなるだろう。
しかしそれも凛と手を取り合って歩んでいたら乗り越えられる気がする。

この時、汐はそう思った。


「さて、と!出店まわろーよ!」
「あー、さっき汐おごってもらうだとかそんな約束取り付けたな」
「うん!」

楽しそうに足取りを弾ませながら自分の手を引く汐に、転ぶんじゃねーぞと声をかけながら凛は後について行った。

「なに食いたいんだ?」
「出店っていったらこれでしょ!」
そう言って汐が示したのは。

「チョコバナナ?」
「そー。毎年夏貴と来て毎年食べてるの」
ふーん、と凛は息巻く汐を眺める。
屋台のおじさんに意気揚々と声を掛けしれっと財布から福沢諭吉を取り出す彼女に、なんとも言えない気分になりながらそれを制止する。

「俺が出すからそっち行ってろ」
「いいの?」
「おごるって約束したろ。で、何本食べたい?」
「もー、何本も食べたらあたしおデブになっちゃうよ。凛くんあたしを太らせてどうするのー?」
と、言いつつ嬉しそうな汐に微笑ましい気分になりながら凛は代金を渡してチョコバナナを受け取る。

「ん」
「凛くんありがとー!」
彼氏としての矜持か、汐に一万円札を使わせるのが憚られた。
凛からチョコバナナを受け取りながら嬉しそうに笑う汐は年相応で。

汐がお嬢様であることに多少の引け目を感じていた凛だったが、最近はそんなこともなくなった。
むしろお嬢様な部分を見つけることを楽しんでいた。
汐が育った環境を垣間見ることが出来るからだ。


そんな汐に凛は目をやる。
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