Destination Beside Precious
第9章 7.Life and non-Life ※
さくさくと雪を踏む音。
高さの合わない肩を並べながら凛と汐は歩いていた。
「今日は雪すごいね…」
「だな。夕方には今より強く降るらしいぜ」
白い息を吐きながらふたりは話す。
本当は手を繋ぎたかったのだが、手袋を外すと霜焼けができそうだから諦めた。
県内全域が豪雪地帯に指定されているから雪には慣れたものだが、やはり雪道は危ない。
自然と歩くペースもゆっくりになる。
「じゃあ雪が強くならないうちに帰らなきゃね…って、ついた?」
話しているうちに目的地に到着した。凛の家から少し歩いたところにある神社だ。
新年ということもあって普段とは比べ物にならない程の人。
しかし人混みというには少し寂しいものがあった。
「そんなに混みすぎてないな」
「そうだね。迷子にならずに済んだかも」
「お前迷子になると見つけるの大変そうだな。人に埋もれて」
「ちょっとそれどういう意味ー」
「お前がチビって意味」
喉の奥から笑いを洩らしながらちょうど自分の顎あたりにくる汐の頭を、ぽんぽんと叩く。
「…凛くん、顎に頭突きしてもいい?」
「なんだよ、相変わらず凶暴な子リスだな」
「人を珍獣みたいに言わないでよー」
「珍獣とは言ってねぇけどな」
可愛い可愛い、と言って凛は汐の髪をくしゃっと乱す。
年が明けても相変わらずゆるい。癒される。
人混みというものはイライラしがちだが、汐と一緒だとあまり苦にならない。
「もう!凛くんったら言いたい放題!あとでなにかおごってよねー!」
「しゃーねぇな、わかったよ」
そんなやりとりをしているうちに露店の並ぶ通りを抜けて鳥居のそばにたどり着いた。
手水舎で手を清めようとしたところ、寒さで水が凍っていた。
そこを通り過ぎて境内へ入る。
「夏貴以外と初詣にくるなんて初めて」
「俺は毎年江と母さん…家族と行ってた」
「仲いいんだね」
「んー、まぁな」
並んでいる露店は毎年同じようなものなのに、毎年目移りしてあれやこれや買って食べてる仲のいい母と江。
凛はあまり興味が無いからそんな女ふたりの後について付き合っていた。
時たま〝お兄ちゃんも食べる?〟と言われて江から焼き鳥やらチョコバナナやらをひとくちもらっていた。
そんな話を汐にしたら、ほんとに仲良しなんだね、と笑っていた。