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Destination Beside Precious

第9章 7.Life and non-Life ※


「そういえばこの前お兄ちゃんが汐ちゃんの家に泊まりに行ったんだったよね!楽しかった?」

何気ない江の言葉。
初めて男女の関係を持った夜からまだ1週間も経ってない。
未だにその余韻を忘れることのない凛は、全身の血が顔に集まる思いだった。

「楽しかったよ!ご飯作るの手伝ったりしてくれて嬉しかったなー。あの日はありがとね、凛くん」
「お、おう…」
表情を変えることなく笑顔で、しかもいやらしさを全く感じさせない受け答えをした汐に内心舌を巻きつつ視線をやる。
ちょうどちらりと向けられたローライドガーネットとぶつかった。
その瞬間汐は意味深な笑みを口元に宿した。
なんだかおちょくられているような気分になり、口元だけで〝お前なあ…〟と言った。


「江、そろそろ行きましょうか」
「あっ、はーい!」
3人を微笑ましそうに見つめていた母は突然そう切り出した。

「どこかに行くんですか?」
「うん。今から私とお母さんは岩鳶のおばあちゃんの家に行くんですよ」
ソファに掛けてあったコートに袖を通しながら江は答えた。
どうやら新年の挨拶に行くらしい。マフラーを巻く江がそう教えてくれた。

「じゃあ凛、あとよろしくね」
「汐ちゃん今度は私ともお泊まりしようね!」
行ってきます、と手を振る母と江をふたりは見送った。
愛想良く手を振っていた汐を後目に、玄関の方で扉が閉まる音と同時に凛は息をついた。


「この前の話題出された時、凛くんすごく顔赤かったね」
「うるせっ。逆になんでお前はあんなに余裕綽々だったんだよ」
「なんか今の凛くんのセリフ、この前あたしが同じこと言った気がする」
くすりといたずらな笑みを浮かべる汐に、凛はしてやられた気分になる。
しばらく笑った後、そのいたずらな笑みを幸せそうなものにかえて汐は凛に寄った。

「あの夜、本当に幸せだったよ」
「俺も」
とても自然な流れで凛は汐を抱きしめてキスをした。

「改めて、今年もよろしくな」
「うん、あたしこそ。今年もよろしくお願いします」
唇を離して、凛は汐の頬に触れた。やわらかくてつややかな桃色に唇を寄せると、凛は微笑んだ。


「じゃ、俺たちも行くか」
「そだね」
そう言って凛は汐から身体を離す。
そしてコートとマフラーを取りに自室へ向かった。


年が明けて1月2日、この日はふたりで初詣に行こうと約束をしていた。
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