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Destination Beside Precious

第8章 6.Dye Your White ※


「電気消すな」
「あ、凛くん待って」
ベッドから降りた凛に汐は声をかける。
振り向いた凛は示された方へ視線を向けた。

「間接照明。凛くんロマンチストだから多分好きだと思う」
汐が示すそれの電源をいれる。そして部屋の明かりを消した。
橙のあたたかな光に彩られた部屋は一瞬にしてえも言われぬようなムーディな空間に変化する。

「なんつーか、…雰囲気でるな」
再び汐のそばに腰を下ろした。

汐は凛のことをじっと見つめていた。
薄く開かれた唇が瑞々しい果実のように淡く桃色に光る。

凛は汐の肩に手をかけた。
そしてそのまま、触り心地が気に入ったガウンを肩からおろす。
薄暗がりの中に浮き上がるのは、汐の白い肩。柔らかい女の腕。


凛はパーカーのポケットに手をつっこみ、なにやら正方形のビニールのようなものを取り出した。

「準備いいって引くか?」
「ううん。…むしろ、その…嬉しい…かな」
パーカーを脱いだ凛の切なげな笑顔が胸をつく。
汐は静かに首を横に振った。

彼がポケットから取り出してベッドのすぐそばのチェストに置いたのは避妊具だった。
今まであまり現実味のない存在だったが、今から凛とすることはその避妊具を必要とする行為だということを急に意識してしまう。
思わず俯く。唇を引き結ぶ。胸が煩いくらいに鳴っている。

「寒くねぇか?」
「うん」
短い会話。互いの吐息がかかる距離でじっと見つめ合う。
じりじりと、限界まで焦らされる。鼓動の速さは最高潮を迎えようとしていた。


「汐」

触れるように唇を奪われた。
拍子抜けしてしまうほど軽いキスだった。
顔を上げると、穏やかな凛の笑顔。
凛のぬくもりが欲しくて手を差し出すと、優しく抱きしめられる。


気づいたら凛の腕の中で天井を見つめていた。
そっとだが凛に組み伏せられたのだ。

再び唇が降ってくる。
お互いの唇を食むようにキスを楽しむ。
やがて汐の唇を割って口腔内に凛の舌が入り込んできた。
おずおずと受け入れると、ゆっくりと絡め取られる。

「…ふっ…ぅん…っ」

いつか見た洋画のワンシーンを切り取ったような情熱的なキスだった。
唇と唇が溶け合ってくっついてしまうのではないかと、そんな錯覚さえ感じてしまう。
ねっとりと絡み合って、時折淫靡な音を立てる。
今までしてきたキスとは比べ物にならない。
気持ちよくて何も考えられない。
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