Destination Beside Precious
第8章 6.Dye Your White ※
「お。汐」
自室の床に座っていた凛が振り向いた。
床暖房が気に入ったらしい。汐を見るなり、床に座っても冷たくないっていいなと言っていた。
ベッドの上に足を崩して座る。
身体を汐の方へ向けた凛は汐のルームウェアの裾に触れた。
「すげー、お前こんなドレスみたいなの着て寝るんだな」
「今日だけだよ」
凛が風呂からあがったときに汐が洩らした感想と同じことを言ってきた。
凛の視線が一瞬だけ普段よりも少しだけ大胆にあいた胸を捉えていたことに汐は気づいた。
それについては何も触れずに、手を伸ばして凛の下ろされた前髪に触れた。
「凛くん髪の毛下ろしてるとちょっと幼く見えるね」
「んー、長ぇからな」
いつもそうされているように、指で梳いてさらさらとした髪の触り心地を楽しむ。
同じように凛は手を伸ばして汐の髪に触れた。
「汐は風呂上がりでもそんなに変わんねぇよな。少し毛先がまっすぐになるくらいか?」
「そうだね」
お互いの髪に触れ合う。髪から指を離した凛は自分の髪に触れる汐の手を握った。
そのまま見つめ合う。やがて同じタイミングで表情を崩し、唇を重ねた。
ふわりと触れるようなキスだった。
「俺もそっち行っていいか?」
「うん。…きて」
凛は立ち上がり、ベッドに腰を下ろした。
自分を見つめる凛の瞳にゆっくりと鼓動が速くなっていくのを感じる。
「すげー。ふわふわモコモコじゃねえか」
「触り心地いいでしょ」
「ずっと触ってたくなるな」
ガウンを着た汐の肩に触れながら凛は笑う。
「モコモコな汐。モコしお」
ガウンの触り心地が気に入ったらしく凛は朗らかな笑みを浮かべた。
腕や肩から背中を撫でられ、そのまま抱きしめられる。
「…なんかお前、いい匂いがする」
しばらく無言で汐を抱きしめていた凛がふいにそう呟いた。