Destination Beside Precious
第7章 5.Illuminate The Darkness
「ごめんごめん…凛くんはロマンチストだったね」
「ロマンチストとか言うな」
「そんなロマンチストな凛くんにうってつけの場所があるよ」
「だから、ロマンチストじゃねえけどな。…で、うってつけの場所って?」
「こっちだよ」
汐は踵を返して今来た道を凛の手を引いて戻り始めた。
「なあ汐…俺ここにいて大丈夫なのか?」
スピラノの正門を渡って校舎の方へ歩いていく。
「今から行く所は一般公開してるから大丈夫だよ」
汐の言葉に少し緊張は和らいだが、それでも女子校の内部に侵入しているという事実は変わらない。変に緊張してしまう。
「そういえば、朝璃保のやつからこれ送られてきたぞ」
「え?なになにー?」
緊張を紛らわそうと凛は今朝の話を持ち出した。
璃保からクリスマスプレゼントといって送られてきた写真。
ポケットから携帯を取り出してそれを汐に見せた。
「えー!璃保これほんとに凛くんに送ったのー!」
恥ずかしい、消して、とねだる汐を華麗にスルーして凛は携帯をポケットにしまった。
汐の話によると、璃保に呼ばれて振り向いた瞬間を狙われたようだ。
「スピラノはクリスマス専用衣装とかあんのか?」
「なにそれ?」
「この写真のお前、制服じゃねぇだろ」
この写真の汐、さらにもう1枚の写真に写っていた璃保が着ている服はネイビーのワンピースだった。
正確に言えばイノセントドレスというもので、教会にいる修道女が着ているドレスのようなデザインのドレスである。
「あー、あれね。あれは聖歌隊の服だよ」
「お前聖歌部にも入ってたのか?」
「ちがうよ。各クラスから4人くらい集めて結成するの」
それはつまり選抜なのだろう。
以前一緒にカラオケに行ったとき、汐の歌がとても上手くて驚いたことを思い出した。
「そういえばお前歌上手かったもんな」
「凛くんほどじゃないけどね。凛くん上手いし、歌い声ほんとに、…えっちなの。他の女の子には絶対に聞かせたくない」
いきなりそんなことを言われて凛は汐を見つめてしまった。
凛の先を行く汐は唇を結び頬を染めている。
思わず喉の奥から笑いが漏れる。
「もう、凛くん今笑ったでしょ!」
「いや?何のことだ?」
汐の反応が可愛すぎてとぼけてみせた。
すると汐は怒ったような素振りをしたからまた笑ってしまった。
「もっと照れてくれると思ったのに、もうやだ凛くん!…あ、ついたよ」