Destination Beside Precious
第7章 5.Illuminate The Darkness
よく見ると汐が着ていた服は制服ではない。
確かスピラノの冬服は黒い長袖シャツに白のジャケットとベストとスカートだった気がする。
写真の汐が着ているのはネイビーのワンピースだ。
スピラノはクリスマスにコスプレでもするのか、など思いながらぼんやりと写真を眺める。
そろそろ部活に行くか、と凛が立ち上がろうとしたら再び携帯が震えた。
送り主を確認するとまたもや璃保の名前が表示されていた。添付ファイルあり、とも表示されていた。
メールを開封するとまず凛の目に飛び込んできたのは璃保と汐のツーショット写真だった。
今回は不意打ち撮影ではなかったようで、汐も璃保も画面越しではあるが凛に向けて笑顔を浮かべている。
『件名:Re:Re:
本文:来年は着替え中の写メを送ってあげる』
着替え中の様子を盗撮できる関係であることに舌を巻く。
自分が同じことをしたら恐らく怒られるだろう。ちょっと羨ましいと思ってしまう。
(着替え中の汐、か…)
汐の下着姿がふわっと脳裏に浮かんだ。
白くてもちもちした肌に淡い色の下着を身につけた汐が恥ずかしそうに頬を染めて…、とここまで浮かんで凛はそれをかき消した。
(何考えてんだよ!?変態かよ俺…!)
凛も健全な男子高校生だ。着替え中の写メ、といわれるとどうしても気になってしまう。
ましてや大好きな彼女の下着姿だ。気になるのも無理はない、と凛は誰に咎められたわけでもないのに自分を正当化した。
(けど…)
本音を話せば、その露な肩や腕やお腹や脚に触れてみたい。自分の身体に触れて欲しい。素肌の温もりを感じあいたい。
先月のすれ違いを乗り越えてから、今まで以上に汐が愛しくて仕方が無い。
心の繋がりは感じるが、もっと深いところで繋がりたい。
そんな純粋ながらも狂おしい感情が凛の胸に宿っていた。
クリスマスにプレゼントがもらえるのなら〝汐〟が欲しい。
凛は携帯をジャージのポケットに入れて立ち上がった。
もうそろそろ部活に行かなくてはいけない。
午前の練習が終われば汐に会える。早く汐に会いたい。
そう思いながら凛はエナメルバッグを掴んで部屋を出た。