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Destination Beside Precious

第7章 5.Illuminate The Darkness



「凛くんは学校昨日までだっけ?」
「ああ」
雪の降る道を凛と汐は歩いていた。
期末テストが終わってからというもの、時が過ぎるのがやけに早く感じた。
師走、という言葉を汐は頭の片隅に思い浮かべた。

「2学期もあっという間に過ぎていったな」
「そうだね」

雪が降っているとあたりは静かに感じる。
いつもと変わらないはずなのに、今日は妙にしんとしている。
静かな道にふたりの足音だけが同じ速さで鳴る。


「なあ汐」
「ん?」
控えめながらその静寂を破ったのは凛だった。
上から自分の瞳を覗き込む凛の顔を見つめて、相変わらず惚れ惚れする位綺麗な顔をしているな、なんて汐は思ってしまう。

「お前、今日元気ねぇな」
「…え?」
その問いかけにどきりとしてしまう自分がいた。

「顔色も良くねぇし、体調でも悪ぃのか?」
「…そんなことないよ」
確かに月のものでお腹はかなり痛いが特に体調が悪いというわけではない。
薬も飲んだし大丈夫だ。

「そうか。…なんかあったのか?俺に出来ることならなんでも言えよ?」
「…ありがとう凛くん」
この間の進路希望調査のことがよぎるが、それは凛には話せない。


(あのことはゆっくり考えよう…)

そう思うことにした。
こうして凛が心配してくれるだけで汐は嬉しかった。
やりたいことがわからないなんて、わざわざ話すことでもないと思った。


「最近凛くん不足です」
周囲には自分たち以外誰もいないし来る気配もなかったからこう言ってみた。
凛を見上げると、一瞬狼狽したように赤を揺らすと頬を染めながら見つめてきた。
そして凛は手袋を外して頬を撫でた。

「汐、ほら…俺を見ろ…」
ゆっくりと近づいてくる顔に反射的に目を閉じる。
優しく重ねられた唇から凛の熱を感じた。
口は悪いのにキスは優しいし自分のことをとても大切にしてくれている。
それを思うと、とろけそうな幸福感に包まれる。

唇が離れ、凛の顔が少しだけ遠のく。
頬に添えられた手が汐の唇に触れた。
その指を甘く噛んでみた。

「…こら。…子リスにかじられた」
「主食はサメです」
満更でもなさそうに凛は口元を緩めた。
凛のにやけ顔が可愛くて汐もつられて頬を緩める。

「凶暴なリスだな、…ほら、行くぞ」
「うんっ」
満足そうに凛は汐の手を引く。
そしてまた雪の降る道をたわいもない会話をしながら歩き出した。
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