Destination Beside Precious
第7章 5.Illuminate The Darkness
授業の終わりを告げるチャイムと同時に返された答案をまとめて机の上に並べて汐は息をついた。
程なくして少し離れた席の璃保が汐の元へやってきた。
汐の前の席に座ると、脚を組んでこちらに顔を向けた。
「汐ーどうだった?」
「テスト?英語は今までの中で一番良かったよ」
「凛に教えてもらったんでしょ?」
「どうしてわかったの?」
「わかるわよ」
凛と付き合うようになってから成績上がったものね、と璃保は表情を柔らかくした。
「凛くん教えるの上手だからすごくわかりやすいんだよね」
「あんなに見た目いかついのに勉強出来るなんてギャップよね」
「それは璃保もじゃない?」
いたずらな笑顔を璃保に向けた。
どーいう意味よ、と璃保は汐を小突く。揺れたショートヘアからのぞいた耳元でピアスがきらめく。
「にしてもアンタたちも気の毒よね」
「なにが?」
「クリスマス。学校あるじゃない。アタシみたいな遠距離恋愛ならあんまり関係ないけど、アンタたちは違うでしょ」
「そうだね、凛くんには悪いことしたと思ってる」
この間の凛の顔が浮かぶ。
きっと楽しみにしていただろう。
それなのに不可抗力とはいえ自分の都合でそれを反故にしてしまった。
それを考えると胸が痛い思いだった。
出来ることなら学校をサボってでも1日一緒にいたかったが、それもできない。
「ま、うちの学校がミッション系な以上どうにもできないわね」
元気だしなさい、と璃保は汐の頭をぽんと撫でた。
「ねえ、璃保はお正月実家に帰るの?」
「帰りたくない」
間髪入れずに答えが返ってきた。
あまりの即答に汐が苦笑いをしていると、璃保は苦虫を噛み潰したような顔で語り出した。
「とは言っても寮から追い出されるのよね。アイツも年末年始はこっちに戻ってくるけどさすがにずっとアイツの家に居座るわけにもいかないし」
だからどちらにせよ帰らなきゃいけない、と璃保は溜息をついて汐の机に伏せた。
そんな璃保を宥めるように、汐はさっきしてもらったように璃保の頭をぽんと撫でた。
「あれ?汐それ提出しなかったの?」
伏せた璃保の目に止まったのは1枚の紙だった。
それには進路希望調査と書かれていた。