Destination Beside Precious
第7章 5.Illuminate The Darkness
「なあ汐」
「ん?」
「お前、江からなんか聞いてたりするか?」
「江ちゃん?なんかって、なにを?」
「や、だから、そのー…」
唐突に凛はそう訊ねた。
実は最近、妹の江が日曜ごとに誰かと出掛けていた。
凛はその〝誰〟が気になるのだ。
彼氏ができたなど言語道断だ。
江は汐のことを姉のように慕っているから、もしかしたらなにか話しているかもしれない。
そう考えて汐に訊ねたのだが、凛は目を泳がせる。
(言えねぇ…妹のことが心配で仕方ねぇなんて!絶対!!言えねぇ…)
「急にどうしたの?」
なかなか話そうとしない凛に、怪訝そうに眉を寄せた汐は訊く。
「もしかして江ちゃんに彼氏ができたとか?」
「なわけねぇだろ!!」
「わっ!もう凛くん急に大きな声出さないでよーびっくりした」
いたずらに笑う汐に対してつい声を大にして否定をしてしまった。
鋭いのか偶然なのかは判断つかないが、図星だ。
「わ、わりぃ…」
「でも、江ちゃんについての心配事ってことは、なにか思い当たることあるんだ。ね、話して?」
もしかしたら汐はなにか知ってるかもしれないという気持ちと、こんなこと恥ずかしくて言えないという気持ちがせめぎ合う。
しかし自分から話題を振っておいて言わないのは不審がられるだけだと思い、凛は不本意ながら口を割った。
「実は…」
心の内に秘めていた最近の悩みをすべて汐に話した。
終始汐は黙って聞いていた。
すべて話し終わると汐は引き結んでいた口元を緩めていたずらに笑った。
「それで、凛くんは毎週のように誰かとどこかに行く江ちゃんが心配なわけね」
「別に心配なんかしてねぇかんな!!」
「もー、そこ強がらなくてもいいよー」
凛くんは心配性なんだね、と汐は笑う。
うるせー、とか、そんなんじゃねーし、とかぶつぶつ文句を吐き出す凛に汐はいたずらな笑顔をやわらかなものにした。
「凛くんが心配してるようなことは一切聞いてないから大丈夫だよ」
「本当か?」
「うん」
だから凛くんは心配しなくていいよー、と凛の顔を下から覗き込んで笑った。
汐がそういうのなら、そういうことだ。と自分を納得させて凛は頷いた。