Destination Beside Precious
第7章 5.Illuminate The Darkness
テストが終わって数日、あとはテスト返却を待って冬休みを迎えるだけとなった。
そんな凛は汐と駅の付近を歩いていた。
気づけば街並みはすっかりクリスマスムード一色で、浮かれたイルミネーションが建物をちかちかと彩っていた。
その中をふたりは手をつないで歩いていた。
「そういえば凛くん、最近ランニングは?」
「こんなさみぃ中外走るのはトレーニングどころか身体に悪ぃから外走る回数減らして、外行かねぇ日はランニングマシーンで走る量を増やしてる」
白い息を吐きながら凛は答えた。
雪が降るような寒さの中で走ると身体を温めるどころか冷えて怪我につながってしまう。
確に、と汐は納得した。
「だから最近は普通に私服なんだね」
以前は汐と会うとき凛はトレーニングウェアを着てきたのだか、最近は簡単な私服にコート、マフラーだった。
「そういうことだ」
汐に会う日は外に行かない日だから、トレーニングをしたあとシャワーを浴びて着替えて来ていた。
彼女に会うのだから部活帰り以外ジャージというわけにはいかない、というのが凛のポリシーだった。
「前から思ってたんだけど、凛くんのマフラーすごく可愛いね」
「これか?」
凛は自分がつけているマフラーに触れた。
キャメル地に白と黒と赤のチェック柄…バーバリーチェックと呼ばれる柄のマフラーだった。
「うん。これすごいブランド品だよね。それに触った感じカシミヤだし。…どうしたのこれ?」
「俺が小学校卒業してオーストラリアに行く時に母さんがくれたんだ。オーストラリアはこれから冬だからって」
「そうなんだ」
すごくいいものを貰ったんだね、と汐は微笑んだ。
凛のマフラーは年季が入ったものだが、逆にそれが素材の良さを引き出している。
その証拠に何年経っても色褪せることなく凛本人を引き立てつつ首元を温めている。
「ブランド物は長く使った方が味が出るよね」
「確かに深みは出るな」
「あたしもそういう可愛いマフラー欲しいなー」
凛は横目で汐を見た。
ダマスクス柄のマフラーに顎を埋めながら周囲のネオンを眺めている。
ローライドガーネットの瞳にネオンが乱反射して綺麗だと思い、思わず目をそらしてしまった。