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Destination Beside Precious

第7章 5.Illuminate The Darkness



「外、真っ暗だな」
「そうだね」
今まで暖かい屋内にいたせいか、外はとても寒く感じた。
いつの間にか時間は過ぎていき、気づけば来週から12月だった。
悴む手を温めようと吐き出した息は真っ白だった。

「行くぞ」
「あ、待って」
歩きだそうとする凛を引き止めた。まだマフラーが巻けてない。
あまり凛を待たせてはいけないと思い、汐は急いでマフラーを巻いた。

「ん?…おい、上手く巻けてねえぞ」
少し表情を崩し凛は汐の首からマフラーを外した。
そのまま少しかがんで優しく巻き直し始めた。
なすがままに汐はその行為をうけながら、いつもよりも近い視線に少し胸の高鳴りを覚えつつ凛を見つめた。

「できた」
その流れで凛はマフラーにうもれる汐に軽く触れるようなキスをした。
まさかそのままキスされるとは思っていなかった汐は頬を染める。
マフラーを外して巻き直し、キスをするという一連の流れが自然過ぎて汐は驚いた。

「ほら、さみぃし行くぞ」
「うんっ。凛くん待って」
歩き出した凛に汐は駆け寄る。そして凛の空いている左手に自分の右手を重ねた。


「凛くん今日はありがとう」
「おう」
「凛くん教えるのすごく上手いからちゃんと理解できたよ」

凛と交際を始めてから汐の成績は伸びていた。
苦手科目である英語と数学を凛のおかげで効率よく勉強出来るようになったから、得意科目の勉強時間を確保することができるようになったのだ。
もともと学年で中の中くらいの平凡な成績だった汐が、前回の中間テストで上の下あたりに入っていた。

「来週は汐センセイの出番だな」
ついさっき凛は汐に古典を教えてもらう約束をした。

古典は汐の得意教科だった。
さらに運がいいことに鮫柄とスピラノは使っている教科書や履修内容が同じだったからふたりのテスト範囲は同じだった。

「古典は本文の内容を覚えちゃえば簡単だよ」
「それはお前からすると俺が〝数学なんて公式覚えれば楽勝〟って言ってるのと同じだってことを理解しろよ?」
にやりと口角を上げる凛を見て汐は決まりの悪そうな笑みを浮かべた。

早くこの話題から離れたいと言わんばかりに、行こっか!と歩き出した。
そんな汐が可愛らしくて凛はこっそり頬を緩めた。
もちろん汐は気づいていなかったが。

吹きつける風は冷たかったが繋いだ手から相手のぬくもりが伝わるから、心は温かかった。
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