Destination Beside Precious
第7章 5.Illuminate The Darkness
「凛くんがつきっきりであたしの勉強みてくれればあたしもテストですごくいい点とれそう!」
「他力本願じゃねえか。つべこべ言ってねえで説明を聞け」
そう言って凛は汐にデコピンをかます。
痛いと文句を言いながら汐はおでこを押さえた。
この日、凛と汐はふたりでファミレスへ勉強をやりに来ていた。
テスト週間ということでお互い部活が休みだった。
「この例文に使われてる〝have A done〟は〝got A done〟と同じ使い方で、使役と受身と完了の3つの意味があるから気をつけろよ」
進学校だと大々的に謳ってはいないが鮫柄もスピラノ同様偏差値でいえばかなり上位の学校だった。
そんな学校で学年トップ10の成績をキープする凛はとても頭がいいわけで、汐はテスト前はよくこうして英語や数学の勉強を教えてもらっていた。
「じゃあ、この問題は3つのうちどの用法だと思う?」
汐は英文に目を落とした。aの文章を同じ意味でbとして書き換える問題で凛はこの問題に出てくるhad A doneの文章上の意味を訊いている。
文章の意味がわかれば後は単語を当てはめるだけだから、凛の教え方はより効率のよい方法だった。
「…完了?」
「んー違うな。もう1回考えてみろ。完了だと、自分がAを〜してしまう、になる」
「あ、そっか。じゃあこれは受身?」
「そうだ。これと同じ考え方で演習問題もやってみろ」
再び問題に向き合う汐を眺めつつ、凛は頬杖をつきながら古典の参考書をパラパラめくりだした。
得意科目の英語と数学は課題となっている問題集をやれば今回も問題なさそうだ。
さらには地理や物理、化学もあまりネックではない。
今回の期末テスト、凛の山場はテスト3日目にある現代文と古典だった。
なぜ同じ日に国語科目を2つも実施するのかと、文句を言いたい気分だった。
参考書を見ていてもよく分からないから、閉じてしまった。
汐が取り組んでいる問題集に目をやった。
問題の端の方に大学の名前が載っていた。恐らく大学の入試問題だ。
それがテスト範囲にしろ、難しい問題に取り組んでる汐を見ると、頑張ってるなと褒めたくなる。
その髪に触れようとしたら、汐が顔を上げてどうしたの微笑んだから、凛はなんだか恥ずかしくなってしまって何でもねぇよと言ってしまった。
そして逃げるように再び古典の参考書をめくり始めた。