第12章 感情ミートアゲイン
琉架から貰った白飯が盛られた茶碗を持って、一番近かった席についた。
「おい勇希雄、そこ琉架の席。」
正面の席に座る時雨が言った。琉架の席だから座るな、という意味だろうか。
「あ、ごめん。じゃあこっちは春の席?春ー、席借りていい??」
「ああ、いいよ。悪い、最低限の数しか椅子を置いてなくて。大勢が入れるのは、客間だからな…。」
「いいって!!僕が無理言って来てるんだもん。この位、言うこと聞かなきゃ!」
立ち上がり席を代えようとすると、琉架がおかずと味噌汁を持ってきた。
僕の分だろうと察したので「ありがとう。」と言うと、
「ううん、そこに座ってていいよ。私がこっち座るから。」
と琉架が言い、それをそこに置いた。
「そういえば何で今日朝飯食いに来たわけ?」
「ん?ああ、弟と喧嘩しちゃったんだよね。妹もまだまともに話してくれないし…。」
「ん?"妹もまだまともに話してくれない"って…、誓理ちゃんと何かあったのか?」
時雨の問いかけに返事した僕の答えに春が反応してきた。
僕が不登校になって、誓理との事があった時はもう春がいなかった時だ。
春にはこの会話が理解できなかったのだろう。
「ずっと前に誓理とも喧嘩してるんだよね、僕。それで誓理と話したのもそれっきり。」
「へえ。…なんか、弟妹いるのも大変なんだな。」
「ははっ、まあね。でも楽しいって言えば楽しいよ。」
…言えなかった。
誓理とは喧嘩なんて全然していない。
実際、喧嘩という喧嘩はまだ誓理としていないのではないだろうか。
どちらかというと近所でも仲良しで評判の兄妹と言われていた。
人気者の兄と(自分で言うのは恥ずかしい。)しっかり者の妹で、誓理も自慢の兄だと何度も言っていた記憶がある。(自分で言うのは恥ずかしい。)
春にも仲良しなイメージがあると思う。
だから少し、珍しそうにしていた。
(…嘘なんだけどね。)
僕は春がいない間、不登校だったなんて言えなかったのだ。
しかし琉架も時雨も僕が不登校だと知っているが、春に報告しているのだろうか。
していない方がありがたいが、春はその事に触れてくる素振りは見せない。
おそらく知らない。