第15章 【ペナルティ少女説】
重い瞼をあけると、そこは見覚えのない教室だった。
蓮堂 春は、体中電気が走っていたような感覚に襲われていた。
勝手に授業に参加する言うことの聞かない体、見たことのないクラスメートと教師。そして自分の身体すら見覚えがない。
それらはただなんの違和感もなく、板書をとる。
自分に自由はきかないが、ペンを持っている感覚や腕を動かしている感覚はある。
ただひたすらに体感しているだけだった。
「じゃあこのページを…、三島 智花さん読んで。」
「はい。」
見知らぬ教師が指名すると、教科書を持って立ち上がる身体。どうやら自分は三島 智花という少女の身体らしい。
(言葉すら発せないとなると、これは夢なのか…。)
春は夢だと思いこんでいた。いや、思いこもうとしていた。
時刻は放課後になろうとしていた。
三島智花は帰る準備をしているが、教室から出て行く気配がない。それどころか、何かをするわけもなくただぼうっと座り、誰かを待っているようだった。
「とーもっかちゃーん。」
「お待たせ智花ちゃーん。」
「ちゃんと待ってるなんて、エラいね。」
三人の男子生徒が入って来たときには、もうすでに教室に他の生徒はいなかった。