第11章 再会イモーション
「寒気か…。今日はそれほど寒くないぞ。」
春の言うとおり、今日は寒くない。今だってまだ暖かいくらいだ。
「だよねー。気のせいかもしんない。私も寒いって思ってないの。…変な感じだよね。」
「うん、不思議だ。変なこと…嫌なことがなければいいけど…。」
僕は不安そうに空を見上げた。
その日の夜空は少し藍色がかっており、星が一つも見当たらなかった。
電車で15分かけて初宮中学校と家を通う海恋は、勇希雄たちと駅で別れたあと真っ直ぐ帰宅した。
「ただいまー。お母さんいるー?」
海恋は自分の母を呼ぶが母からの返事がない。
仕方なく居間に行って帰宅している人物を確認してみた。
「なんだ、龍也いるんじゃん。誰もいないのかと思った。」
「姉ちゃんお帰り。母さんならまだだよ。帰ってきてた様子もないし。」
「うっそ。じゃあ…ご飯もまだってわけだ。お腹すいてるよね、龍也。」
「うん。でも菓子食ってる。」
開けられたお菓子の袋が一つ、コタツ机の上にあった。
龍也は顎をコタツ机の上に直に置いて、体を丸めた。
龍也が何故か、かなり疲れているように見える。
「じゃあ、あたしが作るからそれまで待っててよ。あと絶対文句言わないこと!」
「うん。」
母のエプロンを着けながら龍也に言うと、龍也はニッコリと微笑んだ。
海恋がチラリとカレンダーを見てみると、今日は所属していた少年野球チームと久しぶりに練習をしてきたようだ。
(シーズンオフ明けで久しぶりだったから、龍也もバテたのかな。)
コクンコクンと今にも眠りにつきそうな龍也に、海恋はタオルケットを掛けてやった。
晩ご飯ができるまで、龍也は夢の中だった。
晩ご飯の支度ができても龍也はまだ起きない。
仕方ないので龍也を起こすことにした。
うぅん…、と言いながら目を開けた龍也の額を持っている箸で叩く。
「ほら、できたよ。お父さんもお母さんもまだ帰ってこないから、先に食べちゃうよ。」
「…これだけ?」
海恋は耳を疑った。
海恋が作ったおかずは、野菜炒めと大きめの玉子焼き。それに白飯とインスタントのお吸い物というメニューだが、龍也には少々足りない量らしい。