第10章 密室インターフェース
「止まれ…!止まってくれよ…!!ゲームできないじゃんか…。」
震える左手で震える右手を捕らえて、静めさせる。
ゲームオーバー画面でヴー、ヴーとバイブがゲーム終了を告げる。
しばらくするとバイブも止まり、触らないままだったので画面も暗くなった。
それと同時に僕はデスクに突っ伏す。
「喧嘩…、する気はなかったのになぁ…。」
今だ震える右手を眺めながら一粒の涙が流れた。
―…ピピッ
「ん…?なんだ?」
デスクに突っ伏していた体勢から、上体を起こして自分のスマホを見る。
先程まで暗く落ちていたスマホの画面には、アプリをダウンロードするトップページが映っていた。
「何で勝手にこのページまでとんでんの、これ…。落ち着いたらまた再開しようと思ってたのに…。」
スマホを手にとって画面をよく見る。
そこにはあるゲームが映し出されていた。
「あ、little policeだ。僕まだやったことないんだよなぁ。」
今大人気のスマホ用アプリのlittle police。
実は僕はまだ登録していない。
(この際だからダウンロードしておこーっと。)
画面に触れてそれをダウンロードする。
手の震えはもう止まっていた。
九寺家の一階、家族が朝食で賑わうなかに長男・勇希雄の姿はない。
「太陽、どうしたの?そんな顔して…。」
「あらほんと。太陽、具合悪い?お熱、計ってみる?」
「ううん、いい。平気だから。」
勇希雄に弾かれてベッドから落ちたが、あまり痛くない。太陽は機嫌が悪いだけだ。
それに真っ先に気付いたのは誓理だった。
トーストをかじりながら太陽に言うと、次に母が屈み込んで心配してきた。
「太陽、お兄ちゃんはまだ下りてこないの?」
「正義。あたしの前でそんな事言うなって、何回言ったら分かんの。」
「でも、いつも一緒に食べてるじゃん。」
「は?視界に入れてないしー。」
「……下りてこないと思うよ。あのまま死んじゃえばいいんだ。」
「た、太陽!何てこと言ってるの!!あんたのお兄ちゃんでしょ?」
「あんなのお兄ちゃんじゃないよ!!」
自分の思いが伝わらなかった太陽は、勇希雄に腹を立てていた。
喧嘩になった理由は、太陽は分かっていない。