第10章 密室インターフェース
母をすり抜けて、太陽は食卓につく。
用意されたトーストを口いっぱいに頬張る。
「ねぇ誓理、何とか言ってよ。お兄ちゃんの事そんな風に言うなんて…。」
「……言ったことないけどさ。あたしも結構、太陽みたいなこと思ってたよ。」
「っ!?…誓理…!!…ねえお父さん、勇希雄も家族よ?私たちの子供よねぇ?普通に暮らせないの??」
「勇希雄の好きにさせてやれ。あいつは絶対、やり直せる。」
「…正義はどう思う?お兄ちゃんのこと好きよね??」
「……うん。」
正義は母の顔が見ていられず、目を反らした。
戻って、九寺家・二階の僕。
リビングに向かう気になれないので、友人の家で朝食を貰うことにしよう。
「あ、もしもし?僕だよー、僕。」
『どうも、ボクさん。何かようですか?』
「やだなー勇希雄だよ!半年ぶりだね、琉架♪」
『街でよく会ってるじゃない。』
「そうだったかも!ねえ今からそっち行ってもいい?」
『別に構わないよ。でも随分早いのね。もっとゆっくりすればいいのに。』
「朝飯!貰いに行くからね!じゃあ後で!」
『ぇ、ちょ、勇希雄!?』
―…プツン!
着替えを済ませて外出できる姿になる。
琉架の家に遊びに行くのはおよそ半年ぶりだ。少なくとも、今年はまだ遊びに行っていない。
琉架は元気そうだ。時雨も元気だろうか。
学年は違うが、2人も幼なじみだ。大切な人だと思っている。
(春にも…久しぶりに会えるんだ…。背とか、伸びてるかな…。)
3年前からきっぱり会えなくなっているので、3年ぶりとなると少し緊張してくる。
春が帰ってきたときも直ぐに会おうとしなかった。
(春に惨めな姿、見せたくなかったんだよね…僕。)
なので今まで一度も春に会ってもいないし、喋ってもいない。
(この機会にぱっと会ってぱっと喋って、普通にしようかな!)
気を引き締めて、家族にバレないように外出した。
「あれ?今、玄関開いた?」
「は?何で分かんの?」
「ガチャンって音がしたよ?」
「正義の聞き間違いじゃない?お父さんもいるし、外出る人いないし。」
「「いるじゃん、外出る人。」」
「は、誰?」
「ゆき兄/お兄ちゃん」
誓理はため息を付いた。