第10章 密室インターフェース
―…笑ってないよ。その顔。
正義に向けた笑顔も笑顔になりきってないという事か。
僕は今どんな顔をしているのだろうか。
「僕ね、心配してるんだよ。ゆき兄のこと。」
立ち上がって真剣な眼差しで僕に言う。
自分の思いが伝わらなかった悲しみよりも、僕に殴られた怒りが宿っているような。
そんな瞳をしている。
(反抗できる歳になったんだね。)
余裕そうに笑ってみると、悔しそうにさらに僕を睨む太陽。
そして睨み返して、僕はこう言った。
「…もう、お前には関係ないだろ。」
その言葉に酷く驚いた太陽は、目を見開いて再び瞳に涙を浮かべていた。
「お…、お前なんて…ゆき兄なんて……!
ずっと部屋にいてそのまま死んじゃえよ!!!!」
―…ガチャン!
勢い良く部屋を飛び出していく太陽。
僕はむしゃくしゃして自分の頭をかき乱す。
「…春は、悪くないんだよ。…全部俺自身の問題だからね…。」
ベッドの上で膝を抱えて小さくなる。
春とは幼なじみの名前。
そう、三年前に事件を犯した張本人だ。
僕は春が学校に来れなくなった頃から、不登校になった。
もう二年も直接会っていないので、春は僕のことを覚えているだろうか。
(…くそっ!!)
すっきりしない。
こんな時はゲームをして気分を紛らわせたい。
(アプリ狩りの続き、しなきゃ。)
「スマホ…。」
ゆっくり立ち上がり、フラフラとスマホがあるデスクに向かう。
デスクの前にたどり着いて、スマホの液晶に自分の顔が反射して映る。
その自分の顔を見た瞬間あの言葉が脳裏によぎった。
『ずっと部屋にいてそのまま死んじゃえよ!!!!』
―…ダン!!!!
両手を思い切りデスクに叩きつける。
その拍子に爪が割れた。
しかしそんなことも気にせず、スマホを手に取り黙々とゲームを始める。
始めたはいいが、視界は定まらないは、手は振るえるはでゲームどころではない。
クリア出来るわけもなく、あっさりゲームオーバーに終わった。