第10章 密室インターフェース
「ぅん…。あぁ、ゲームしなきゃ…。」
ムクリと起き上がってすぐに今挑戦中のアプリ狩りの事を考える。
今すぐデスクと向き合ってアプリ狩りに集中したい。
しかしベッドから降りようとしても隣で弟の太陽が寝ているので、降りる前に動けない。
昨晩、太陽が寝ているのでスペースの広かった壁側に身を倒したのが裏目にでてしまったようだ。
枕側は壁、背中も壁、足元は本棚、前には太陽。
そして何よりスマホをデスクの上に置いて寝る癖が僕にはある。
ベッドから降りてスマホを手に取るには太陽を跨ぐしかない。
(きっと、太陽は僕の事を心配して寝に来たんだろうな…)
「でもまだ八時だし、寝ててもいいか…。」
「ぁ…ゆき兄…。おはよう。」
寝直そうとしたとき、丁度太陽が起きた。
「おはよう。やっぱり、わざと僕の部屋に来たんでしょ。眠かったのにわざわざ起きてさ。」
「え…何で分かるの?」
「だって僕のベッドに座りに行っちゃうんだよ?寝に来たんだって、後から分かった。」
残念そうな顔をする太陽に、心情を悟ってしまった罪悪感と、太陽が自分を心配してくれている感動が僕に残った。
誰も心配していないのはきっと本当だろう。
だが太陽は違う。
いつも家族の事を一番大切に思っている。
学校の行事や友達と遊ぶにしても、家族の反対や不都合があると必ず断る律儀な弟だ。
昨夜も僕の事を心配して部屋に来たというわけ。
「…僕ね、ゆき兄とちか姉が仲悪いの知ってるよ。」
「ふーん。まぁ誓理にあんな態度とられてたら誰でも気づくよね。」
「…僕、"あの時"幼稚園だったから何があったのか分からなかったよ?」
「うん。」
「…ゅき兄、…学校行かないの?」
(…だってさ…。)
行かないの?
って聞かれると返す言葉に困る…。
だってゲームしてる方が楽しいもん!あいつが学校通い出したのは知ってるけど、今更ゲーマーから抜け出せないよ!
(…なんて、口が裂けても言えないな…。)
でも、誓理が僕を嫌う理由は僕が高校に通っていないからか…?
僕は違うと思う。
予想に過ぎないが、『不登校の僕』が嫌いなんじゃなくて、友達が学校に来られなくなっただけで自分も不登校になってしまう『弱い僕』が嫌いなんじゃないか?
まぁそんな相談も、家族には出来ないわけで。