第10章 密室インターフェース
「そのうち行くよ!心配しないでな、太陽。」
笑うしかなかった。
こうやって本当の事を言えない所にも、僕の弱さがにじみ出しているのかもしれない。
「嘘だ。」
「……え?」
太陽は上半身を起き上がらせて、壁にもたれ掛かって座っている僕の膝に手を置いた。
僕と太陽は向かい合わせに座った状態だ。
「学校に行くの、怖いんでしょ。…変な人って言われるって、思ってるんでしょ。」
(よ…、予想外の…言葉だなぁ…。)
太陽は…なぜこんなに鋭いんだ?
(本当に小2なの、こいつ…。)
「…ゆき兄が学校に行かなくなったのは、"ゆき兄の友達の所為"なの?って…お母さんもお父さんも言ってたよ。」
「…!?」
―…バシッ!
僕は膝に乗っていた太陽の手を力一杯振り払った。
その拍子にベッドの下に転げ落ちた太陽が、鈍い声を上げる。
一番聞かれたくない言葉だった。
アイツの所為じゃない。
僕がくっつき過ぎていたんだ。
決してアイツは悪くない。僕自身が良かれと思って学校に通っていないんだ。
(これ以上アイツを悪いようには言わせないからな…!)
怒りに満ちて、涙目で起き上がる太陽に睨みつけて手さえも差し伸べない。
―…ガチャ
「「 ! 」」
「お兄ちゃん?…太陽も、どうしたの…?」
突然僕の部屋にノックもせずに入ってきたのは、もう1人の弟"正義"だった。
正義は太陽の双子の弟で、九寺家では末っ子の位置にある。
僕とは11歳、誓理とは5歳離れているので、皆から甘やかされて育ってしまった。
恥ずかしがり屋な性格なので、知らない人との会話が苦手だ。
「どうしたって、何もないけど。正義はどうしたの?早起きだね。」
ニコリと笑って正義を安心させる。
いつからこんな偽善をするようになったのかな、僕。
「…ドンって音がしたから起きて、大丈夫かなって…。」
「…太陽が寝ぼけてベッドから落ちたんだよ。昨日、夜遅くまで起きてたもんな。太陽。」
「…うん。」
「いないと思ったらお兄ちゃんの部屋にいたんだね、太陽。お姉ちゃんに怒られるよ。」
「平気だよ。ちか姉が怒ったって、僕怖くないもん。」
「…正義。兄ちゃん達あとで行くから、先に一階に行ってなよ。」
「え?うん、わかった。」