第9章 囁きアドバイザー
(ダウンロードしたらダメって言われても…。もう、それしか方法が……。)
「チッ。ナルミめ。邪魔しに来やがったか。」
(ナルミ…?この人の名前か…。)
男もウィンドウに目を移して、少女が写っているテレビを睨んだ。
それに対抗してか、少女も男を睨み返したような気がした。
『ねえ、君!絶対《little police》をダウンロードしたらダメだよ!!君が危ない目に遭うから!』
少女がテレビの内側から画面に手をついて、身を乗り出すようにして叫ぶ。
今思えば、彼女が着ているセーラー服は
うちの制服ではないか。
それに、彼女は映像なのに何故俺達と会話をしているようになっているんだ…?
「死者が言っても冷やかしにしか聞こえねえぞ?たかがゲームに危ない目なんてあるかよ。」
『…そうやって人を騙して…!』
(何なんだよ…!危ない目って…!!俺は姉ちゃんを助けなきゃいけないのに…!!)
「…姉ちゃんを助けなきゃいけねえもんな。」
「…!?……あぁ、そうだよ!!俺は姉ちゃんを助けなきゃいけないんだ!!」
「なら…やるしかないんじゃねぇの!?」
「…っ、する!!姉ちゃんを…姉ちゃんを助けるんだ!!」
『だめぇ!!!』
「戻れよ、ナルミぃ!」
男が手を力強く振った瞬間、少女がテレビの中から消えた。少女が消えたと同時に砂嵐だった画面がいつものニュース映像に戻った。
男が何をしたのか分からないが、俺は《little police》をダウンロードする事を決めた。
どんなに危ない目に遭っても構わない。
俺は姉ちゃんを助ける。
姉ちゃんは死んでない。
きっと生きてる。
だからまた、
家族四人で暮らそうよ…
「いいか、クソガキ。帰ったらすぐにアプリをダウンロードしろよ。メール送っといてやる。」
「ぅん…。分かった。あの人誰だったの?」
「ああ、知らなくていい奴だ。」
「アドレスは…?」
「んなもんいらねー。じゃあな、クソガキ。」
「ぁ…待って!!…ください。」
去っていく男を呼び止める。
まだ、大事な話が残っている。
「あなたの名前…は?」