第9章 囁きアドバイザー
お前は野球が好きか?
ああ、
この質問
前にも聞かれたな。
「そうか。良かった。それなら俺達は安心して引退できる。任せたぞ、千歳キャプテン。」
「はい…!」
3日前、結希さんと別れて真っ直ぐ家に帰ったあの日。
ばあちゃんにも花田さんと同じ質問をされたっけ。
『ただいま。』
『ぁあ、龍ちゃん!やっと帰って来たんで。もう10時過ぎとるから、誰かん家に留まるんかと思ったわ。』
『ごめんね、ちょっとムシャクシャしてさ。』
『ええんよ、帰ってきてくれて良かったわ。晩ご飯食べるやろ?』
『うん、腹減った。でも先にシャワー浴びてくるから。』
そして、その話は風呂から出て晩飯を食べている最中にあった。
『ねえ、龍ちゃんは野球好き?』
『え?…好きに決まってるじゃん。』
『なら良かった。ほな練習とか辛くても頑張れるんやね。』
『…うん。楽しいからね。それどういう意味?』
『大した事じゃないんやけど、龍ちゃん、お父さんが学生時代何部だったか知ってる?』
『…知らないな。写真部とか?スポーツしてたイメージ無いな。』
『実はねお父さん、小・中・高と、ずっと野球やってたんよ。』
『えっ!?そうなの?』
『ええ、普通に上手だったんよ?背番号4番を背負って頑張ってたわ。』
『知らなかったな。しかもセカンドだったなんて。俺より上手かったのかな。』
『んー。それは分からんわね。でもお父さんは野球の事何も知らんわけじゃないんよ。分かったげてね。』
『うん…。でも何で隠す必要があったんだろう。一緒に野球できたかもしれないのに。』
『龍ちゃんに、自分の野球をしてもらいたかったんとちゃう?』
『…。また話しとくよ父さんと。』
『そうやね。』
俺は野球が好きだから頑張れる。
試合に出たいな。
試合をしたいな。
そのために入部希望者がいなかった今年の一年の勧誘を頑張ろう。本当に。
「あれ見たよー龍也。一年の勧誘パレード!さすが野球部って感じだったねぇ!!」
「ああ、初宮野球部の色がでてたな!!ほかの部活にはできないぞ。あれは。」
「どんな色ですか(笑)」
そう、うちの野球部は一年生の部員がおらず、三年生5人・二年生7人だけで活動していた。