第8章 路地裏コンテニュー
揺さぶっても「うっ…」としか応えないので、私はとりあえず街灯が明るい大通りの歩道まで運ぶことにした。
「ちょっと痛いけど我慢しなさいよ…?ぃよいしょ!!」
両脇に自分の腕を絡め、引きずるように運ぶ。
(ぅん゛!…結構重いじゃない!?)
力の入っていない人はこんなにも重いのか。人に肩を貸したり、手を差し出したりするのが面倒と言っているが、自分の力も使おうとしているだけ増しのようだ。
「…。この子…男だったのね…。真っ暗だったから気付かなかったわ。」
大通りまで引きずると街灯の下にベンチがあったので、再び頑張ってベンチまで引きずり座らせた。
真っ暗だった路地裏の時は全く分からなかった容姿も、明かりに照らされれば一目瞭然。倒れていたのは完全に少年だった。
(でも何で野球のユニフォーム着てるのかしら。)
ちょっとした買い物なら着替えてくるだろう。こんな服装、制服でウロチョロしているのと同じだ。誤解を招かれる恐れがある。
だとしたら下校途中か。こんなに遅くまで生徒に練習させる教師がいたらぶん殴ってやりたい。まあいないだろうけど。
また、この辺りにある学校は少なくはない。下校に時間を掛ける生徒は見たことが無い気がする。
「何のために…?」
「…何が、ですか?」
(…?返事がきた?)
声のする方を見てみると今まで気を失っていた少年と目が合った。
「…気が付いたの?」
「はい…。あの、俺…ずっとここにっ!」
「うるさいわね。あたしが運んできてやったのよ。感謝しなさい。」
「…あ、ぁりがとうございます…。ゴホッ。」
俯き加減で言う少年にキュンとしてしまった。だが私にショタコンの趣味はない。断じてない。
しかし私が運んできたのは、少年と言っても中学生だ。
ユニフォームにsomemiyaと書いてある。これはきっと、この辺りの市立初宮中学校のことに違いない。
(あー…。結構可愛い。童顔ってやつ?童顔。ベビーフェイスかぁ。弟欲しいな。)