第7章 一塁メモリーズ
動揺がまったく隠せなかった。この話は心臓に悪すぎる。
冷や汗が顎を伝い、地面に垂れた。
「馬鹿野郎が。俺はてめぇの姉弟なんざ殺しゃしねぇよ。
俺が殺したのはなぁ
その時一緒に発見された…もう1人の女子生徒だ。」
「そんな…、あんたはあの男と…共犯者だったの…?」
目の前の男に寄り添い、胸ぐらを両手を上げて掴んだ。
恐怖とは裏腹に答えるまで逃がさないという気持ちが先走った。
「んな訳ねーよ。放せクソガキ、汗臭ぇんだよ。」
「答えろ!!答えるまで放さない…!」
俺の腕を乱暴に握り、無理やり剥がそうとするが中々退こうとしない俺に諦めて話を続けた。
「共犯でなければ、知り合いでもない。…満足か?」
どういうことだ?
たまたま同じ場所で人を殺した?
たまたま同じ場所に死体を遺棄した?
謎が謎を呼びすぎている。
「ま…詳しく言ってやるとだな、俺は女子生徒を殺した。その死体を見たお前の姉弟がアイツに殺されたんだ。お前の頭でも分かるか?クソガキ。」
「み…、見たからって何で殺されなくちゃ…いけないの…?」
とうとう目の前がぼやけてきた。きっと今俺は泣いている。
実の姉が死んだ時の事を思い出してしまったのだから。
「はぁ…?そんな事、考える限り…アレだろ。アレ。男女関係には色々あるからな。殺されたって勘違いしたんじゃねえの?アイツもとことん馬鹿だな。」
「そ…そんな…。」
初めて突きつけられた現実で、ショックのあまり、その場に座り込んだ。涙か汗か分からない雫が地面に幾つもの染みを造っていた。
こんなにもショボい理由だったから今まで親族にまで明かされてなかったのか。
だとしても、警察なら家族に伝えるべきだろう。警察のこの行動が腹立たしい。