第14章 その名を呼ぶ創始者
夕日がまだまだ高い赤い下校時間。
街中とは一角離れ、うどん屋や肉屋などの老舗が連なる中のマンションに歌川家はあった。
焦げ茶色のひときわ目立つ新しいマンションの三階。歌川・三条と書かれた部屋からは早くもいい匂いが漂ってくる。
「ただいまー・・・。」「おじゃましまーす!」
気が病んだようにドアを開けるみさきとは対象に、山吹はみさきの後ろから元気よく叫んだ。
直ぐに返事はきた。
部屋の奥からトタトタと軽い足音が聞こえる。
「おかえりなさーい!」
出迎えてくれたのは、同い年くらいの少女だった。
彼女の名前は三条愛美(さんじょう あみ)。みさきが一緒に暮らしている高校一年生の少女だ。
山吹はそれに気をとめることなく、家に上がり込んだ。そして、今日あったことをその少女に詳しく説明し始めた。
「ってことがあって、心配だから今日は泊まらせてもらいます!」
「そんなことが…。ありがとうございます、山吹君!みさきのこと、ずっと監視しててください!」
「えええ?!ちょっ、ちょっと愛美!そんな簡単にOKしていいの?!」
あっさりと山吹を泊まらせることにした愛美を説得するも、どこか楽しそうな愛美を見てみさきは遂に諦めてしまった。
急遽決まったので、晩御飯をもう1人分多めに作り合わせている愛美にバレないように、みさきは山吹を風呂に入るように言った。
自分は晩御飯の後に入る派だと言い張る山吹を半ば強引に風呂に入れた。