第14章 その名を呼ぶ創始者
「なんで急に消えるんだよっ!俺すっげービックリしたんだからな!!」
山吹が仰向けに寝ているみさきに言った。
なんで急に消えるんだよっ!…みさきは虚ろな感覚で思考を巡らせる。
寝ぼけたような感じではあるが、みさきが消えたという山吹の言いようから、先ほどのことは夢ではないのかもしれない。
「や、山吹君…。俺、今…」
「あ~…!っもうホント焦ったかんな!!いなくなったと思って、探しに行こうとしたらベンチに寝てんだもんよー!俺がおかしいのかぁー?」
山吹によると、みさきがこの廊下からいなくなったのはたった今らしい。
みさきの感覚ではしばらくの間あの空間にいたように思えたが、気が付けばみさきは寝ていたという証言からさっきまでのことは夢だったのかもしれない。
一体なにが起こっているのか、みさきにも全く理解ができなかった。
さっきの出来事や、あの人達はだれだったのか。
本当に実在するのか。
夢にしては不気味であるし、本当にしては非現実すぎる。
あの場にいた、琉架さん達に再び会うべきだろうか。
それすら分からなかった。
それから時間は経ち、結局琉架達には会わずに帰宅した。
他学年とのタイミングや、お互いが会おうとしなかったのか、学校では出会わなかったのだ。
(また、会えるかな…。)
「うったがわー!!」遠くから山吹の声が聞こえる。
「え?!山吹君?!どうしたの?」
走ってきた山吹は、息も切らさずに「心配だから、今日泊まってやる!」といった。
泊まる?!うちに?!
マズいぞ。非常にマズい。
だってうちにはアレがいる…!!
「むむむ無理だよ!いきなりだし、山吹君も準備してないじゃん!!」
「着替えなら問題ないって!!今日部活で履き替えてないから!」
「そ、そうじゃなくて‥!でも俺の部屋狭いから迷惑かけちゃうよ!」
「平気だって!くっついて寝ちまおうぜ!」
目の前で大きく親指を立てる山吹を俺は止めることができなかった…。