第14章 その名を呼ぶ創始者
結希の手は冷たくなっていた。
そして、握りしめた拳に汗が滲む。
「わ…悪かったわね…。」
自分の発言によって流れた重苦しい空気を、責任を持って入れ替える。結希にはプライドがあった。
「大丈夫ですよ、結希さん!私、親の顔を見たことないので、悲しいとかむしろ思わないんです!!そんなに自分を責めないで下さい!」
結希はほんの少し笑った。
それを見て他の3人も笑った。
「そういえば、皆さんはどこに住んでるんですか?」
みさきが4人に質問した。
「俺は一前寺市なんですけど、千歳君は?」
「俺も、一前寺市です。」
「え?そうなの?俺と琉架も一前寺市だぜ。結希さんは?」
「あ、あたしも一前寺市だけど…。」
「すごい…!みなさん一前寺市なんですね!もしかしたら、私たち本当に会ったことがあるのかも知れませんね!!」
驚くことに、5人全員が同じ市に住んでいるという。
これも、選ばれた理由に関係するのだろうか。
それはまだわからない。
すると琉架が再びあの話題を持ち出した。
「ねえ、龍也君。さっき私と会ったことあるかもって言ってたよね。」
先ほど光っていた文字がまた、静かに再び言葉を紡いでいく。
「はい。」
それに気づくことなく、5人は話を進める。
「いやな質問だったら、答えなくていいからね?あのね、龍也君はお姉さんとはいくつ年が離れてるの?」
静かな言葉は密かに終わりを告げる。
「4歳です。だから、生きていたら…高3だと思います…。」
ー『ミッション終了条件達成。あと5秒でリアルワールドに帰れるよ☆』
「やっぱり…、龍也君のお姉さんって…」
みさきが目を開けると、そこは見覚えのある光景だった。
そう、ゲームを始める前に山吹と共に弁当を食べていた廊下だ。そこに、みさきは無造作に倒れていた。いや、寝かされていたのだ。
「う、歌川ぁ!!!!」
この透明感のある声は、紛れもない山吹の声だ。みさきは反射的にそう思った。
そして、いつも見ていた顔が寝ている自分の顔をのぞき込んでくる。