第14章 その名を呼ぶ創始者
「実は俺も中学は初宮で、陸上部に所属してたんだぜ?俺が2年の春に、1年生が1人で陸上部の見学に来ててさ、大丈夫かと思って声をかけたんだよ。俺の推測ではその1年生がみさき君じゃないかって!」
「うーん…。確かに陸上部の見学には行ったんですが…、時雨さんに会ったかどうかは思い出せないです…。」
「そっか。でもまあ、ゆっくりでいいから思い出してくれよ。絶対俺だから。」
ポンポンと、みさきの肩を叩きながら立ち上がると時雨は辺りを見渡しながら、
「なにも変わる気配がないな…。参ったぜ…。」
と言った。その言葉に結希が、「もっと深いことを知れってことかしら。」と言った。
「深いこととは…具体的に何なのでしょうか…。」
「そうね、じゃあ簡単に家族構成とかはどう?みんな兄弟とかはいるの?」
結希の問いかけに他の4人は言葉を詰まらせた。何故か全員が少し悲しそうな表情をしており、誰も結希と目を合わせようとしない。
それに気付かず結希は、「あたしは姉がいるわ。結構年が離れてて、家族は両親と姉夫婦それから姉の子供。六人家族ね。」と続けた。
……
誰も結希の話に続けようとしない。いや、続けられないでいた。それを察した結希は戸惑いながらもいつものように話す。
「何よ、なんでそんな顔してんのよ。」
「…実は、俺と琉架には血の繋がった家族がいないんです。」
時雨が少し俯きがちに言った。
琉架はそれとは対称で、受けとめた事実というようなまっすぐな瞳で結希を見つめている。
結希はショックを受けた。それを聞いたとき、胸の奥を矢で撃ち抜かれたような感じだった。
動揺しているあまり、何も答えられなかった。
時雨の話を聞いて、みさきと龍也も言う決意をした。
「お、俺も…同じです。俺の両親は…その…、」
みさきは言うと決めたもののなかなか言い出せないでいた。
「みさき君、大丈夫だよ。」
琉架がそう言って、みさきをなだめる。
みさきはそう優しくされるだけで、母親の温もりを思い出し泣きそうになってしまう。
しかし、今はそれをこらえた。
「俺は、姉ちゃんを亡くしました。その件で両親は離婚し、今は父さんとばあちゃんの3人家族です。」