第7章 Negligenza~油断~
「俺に関わると…徹さんを危険な目に遭わせる
そうでなくても、いつかこの手で…徹さんを傷付けてしまうかもしれない」
静雄の声は震えていた。
先程の怒声を上げていた男と同じ人物かと疑うくらい弱々しい声だ。
小学生の時、公園で見た光景を思い出した。
静雄と再会したあの時の光景を…。
「俺は…怖いんです…徹さんが傷付く事が
誰かに傷付けられる事は勿論
俺が傷付けてしまわないか…ッ、怖い…」
『ふざけんな!』
俺が静雄に向かって叫んだのは初めてかもしれない。
だけど俺は静雄の肩を掴んで言葉を続けた。
『俺はお前の本心を知っている!
お前は本当は暴力が嫌いだ!
なのにケンカに身を投じなければならないお前を…
放っておけるワケねぇだろ!!』
ケンカする度にまたやってしまったと後悔する静雄を何度も見てきた。
俺自身もケンカに明け暮れる事で、静雄の痛みや虚しさを知った。
『俺はお前の為なら傷付く事を惜しまない!
怖くねぇしどんな目に遭ったって平気なんだよ!!』
「っ!!」
これは俺の本心だ。
ウソや偽りは微塵もねぇ。
だけどそれは、静雄を苦しめる結果になったのかもしれない。
「俺に…関わるなあああ!!」
俺も静雄にこんな大きな声で叫ばれたのは初めてかもしれない。
静雄は俺の手を振り解こうと思いっきり腕を振った。
『!』
その時、
―――シャッ!!
俺の顎に静雄の爪が掠った。