第7章 Negligenza~油断~
裏路地に進んでいく程怒声は近付いている。
当たり前と言えば当たり前なんだけどな。
だがそのお陰で声の正体がわかった。
怒声が飛び交っているのかと思ったが…違った。
怒声と…
命乞いをする声だった。
「ひぃ…た…助けてくれ…!」
「うるせぇ! 俺は絶対ぇ許さねぇ…!」
「ぶっ、ぎゃ!」
物陰に隠れて奥の様子を伺った。
足元には傷だらけで地に伏した男が数人。
リーダーらしき男が許しを乞うが問答無用で未だに殴られている。
そのリーダーっぽい奴を滅多打ちにしているのが…静雄だった。
「許さねぇ! 殺してやる!!」
「ぐはっ!」
リーダーらしき奴の腹を蹴った静雄は蹲ったソイツを見下ろした。
何に怒ってるのかわからないが…こんな静雄は初めて見た。
いつもの怒ってる静雄と違う。
静雄の声は怒声と言う字に相応しいくらい怒りを帯びた声だった。
そして俺は…静雄の殺気がヤバいと感じ取った。
本当に人を殺しそうな気配だった。