第5章 Beneplacito~承諾~
<四木side>
私は自分が生活しているマンションに着くと、駐車場に車を駐車したまましばらく中で座っていた。
ミラーで後ろの座席を見たが、先程までいた少年の姿はない。
「…何故でしょうねぇ」
利用しようと思って近付いたのに、随分世話を焼いてしまった。
これではまるで私が利用されているみたいだ。
(四木さんって、父親みたいですね)
「…父親、ですか」
浮気が切っ掛けで悪化した家庭に取り残された子供。
これで自由になれたのでしょうか。
彼は甘えられ我慢することはしてきたと思いますが、甘える事はしてきたのでしょうか。
そして…そんな彼を手助けしてやりたいを思う自分がいる。
…えぇ…素直に認めますよ。
私は彼を気に入ってしまったようだ。
「どうやら、私の悪い癖が出て来そうですねぇ」
気に入った子を甘やかしてしまう癖が。
<四木side out>