第5章 Beneplacito~承諾~
「着きました」
『ん……んんん!?』
四木さんがマンションに着いたって言ったから俺は車の窓から眺めてみた。
そして目を疑った。
『あの…四木さん…』
「なんでしょう」
『おもてなしとはいえ…俺中学生ですよ?
結構…いや、かなり場違いのような…』
窓から見えたマンションはかなりの高級マンションだった。
家賃一体いくらいるんだよおい!
金銭感覚狂ってるのか…?
「貴方なら此処の家賃なんて軽く払えるくらい立派な情報屋にすぐになれますよ」
『情報屋?』
「詳しい話はまた後日 今日はもう遅いですから」
『そうですね』
「これが貴方の部屋の鍵です」
四木さんに部屋番号が書かれた鍵を手渡された。
こんな時間にまだフロントが開いてるのかと聞いたら、どうやらICチップが組み込まれたキーホルダーを翳せば入れるらしい。
ハイテクだな…どんだけ金使ってるんだよ。
「色々大変だったでしょう、今日はゆっくり休んでください」
『まさか俺の家庭の事情までご存じで?』
「ある程度は」
『わーお』
その情報屋とやらは恐ろしいなぁ。
ま、俺のその情報屋ってのに仲間入りするんだけどな。
『これからもお世話になります』
「何かあればいつでも連絡してください」
『はは…四木さんって、父親みたいですね』
「父親、ですか?」
『はい』
我が子の為に色々手を回してくれる父親みたいだ。
そう…ガキの頃、親父が俺の面倒見てくれていた時みたいに…。
『…すみませんしんみりしちゃって 色々とありがとうございました』
「徹さん、」
四木さんに礼を言って車を降りた。
すると四木さんは窓を開けて俺を呼び止めた。
「無理は禁物ですよ」
『はい、失礼します』
俺が一礼すると四木さんも会釈して窓を閉め、車を動かした。
見送った俺は見えなくなった車にもう一度礼をして、入口へと向かった。