第3章 Deterioramento~悪化~
親父が謝っても母さんはあの時のショックが許せず口論になる。
結局は二人の怒りが爆発してお互いを傷付ける。
けど…いつまでもうるさいのごめんだ。
―――ドガッ!!
「「!?」」
俺は部屋の入口に立って壁を思いっきり殴った。
痛くないのかだって? そんなの関係ねぇよ。
こうでもしないと俺が帰って来た事に気付かない程、二人共周りが見えてないんだから。
自分の親ながら情けない…ガキかよ。
『…ただいま』
「お、おかえりなさい…」
「学校はどう…」
親父の言葉を最後まで聞かず、俺は二階にある自分の部屋へ行く為に階段を上った。
恐らく学校はどうだった?って聞こうとしたんだろうな。
凄ぇ楽しいよ、口ゲンカしか出来ないこんな家と違って。
自分の部屋に戻った俺は乱暴にドアを閉めた。
バッグを床に置いて少し汚れた制服の上着を脱いでそのままベッドへ傾れ込んだ。
『……』
(此処が徹が大きくなったら使う部屋だぞ)
(おっきいね!)
(徹も大きくなるからいつか狭く感じるだろうけどな)
(へへっ)
子供ながらにあの頃は幸せだったと自覚していた。
そしてこんな時間がずっと続けばいいなと思っていた。
それが…親父のたった一回の浮気で脆くも崩れた。
『…部屋よりも…家の空気の方が狭くて苦しいよ…』
俺の呟きは虚しく部屋に響くだけで誰にも届かなかった。