第3章 Deterioramento~悪化~
こんなガチなケンカ初めてだ。
俺やダチの場合はふざけて頭を叩いたり蹴ったり押し飛ばしたりするけど、あくまでふざけてだ。
傷付ける為でもなければ痛い思いをさせる為の暴力じゃねぇ。
ケンカって…こんなに痛ぇものだったのか…。
殴られた頬も叩き付けられた頭も背中も蹴られた腹も痛ぇ。
口ん中も切れて鉄の味が広がって、端から滴が垂れているのが嫌でもわかる。
体中の至る所が痛ぇ…とにかく痛ぇ。
「へっ、こっちは弱ぇな」
「違うって、平和島が強いんだって」
「いやいやアイツは強いっつーより
化け物だろ」
『っ、』
化け物…だと?
「そーだったそーだった!
人間の俺達があんな化け物に勝てるワケねぇよな~」
うるせぇ…
「そーそー なんてたって化け物だからなぁ」
黙れ…
「なぁ太刀川?」
『ぐっ、』
蹲った俺を無理矢理顎クイしやがった。
ムカつくんだよ…さっさとその手ぇ放しやがれ。
「お前も大変だよなぁ~あんな化け物と一緒にいてさぁ」
『…いい加減に、しやがれ』
「あ?」
『てめぇらに静雄の、何が…わかるってんだよ』
「何言ってんだお前」
『わかんねぇなら…
すっこんでろ!!』
「あがっ!?」
顎クイを無理矢理解いた俺は目の前の不良に思いっきり頭突きを食らわせた。
その後は…勝手に体が動いた。
「何だてめ…ぶはっ!?」
「ぐへっ!!」
後ろにいた残りの二人のうち一人をぶん殴って、その流れを利用してもう一人を回し蹴りした。
初めてのケンカのハズなのに、俺は不良三人を怯ませた。
いきなりの俺の反撃に唖然としてるのか驚愕してるのか。
将又恐怖してんのか。
『 殺すぞ 』
「「「ひぃっ!?」」」
殺気を込めて睨んだら、一目散に逃げ去って行った。
今思えばこれは俺の…ケンカの才能が開花した瞬間かもしれない。