第1章 affettuoso(アフェットゥオーゾ)
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「ズルくないって。ちゃんと教えてあげるから。ほら、おいで」
再びポンポンと隣を叩いて、ここに座ってって仕草で示しす俺に。
少し迷った様子の君だったけど、また僅かに距離を空けて腰を降ろすんだ。
「なんか…微妙に離れてない?」
「そっ、そんな事…」
「あるよ。ねぇ、。なんか勘違いしてない?」
急に体を離したのは、君が欲しくないからじゃないし。
怖気付いた訳でもない。
ただ君を大事にしなきゃって一心で、泣く泣く諦めたんだから。
なのに愛情のない様な行為だなんて思われてるなら、心外だ。
言葉ってこんな時、意外と不便かも知れない。
どう考えても言葉なんかじゃ伝えきれない。
だから俺達は歌を作り歌を歌う。
でも、それでもまだ伝えきれない想いは、きっと触れ合わないと届かないから。
「えっ?」
「俺に拒絶された…とか思っちゃった?」
「それは…その…」
困ったように視線を外す君は本当に分かりやすい。
「そんな事ある訳ないだろ?」
不自然に開いた二人の距離。
それを縮めるように、グイと君を抱き寄せる。
「おっ…音也くん?」
「…」
さっきの続きとばかりに、そのまま口付ける。
触れるだけのキスから、唇の間に舌を割り入れて口内を犯して行く。